お笑いコンビ・ジャルジャル福徳秀介が、20年に発表した小説家デビュー作の実写化作品で、昨年の東京国際映画祭でコンペティション部門に出品された。

映画化の話が持ち上がった段階で福徳が1度、脚本を書いたもののしっくりせず、脚本から託されたのが大九明子監督。登場人物がスクリーンから叫び出すような力を持った作品が多く、監督作が同映画祭で17、20年と2度、観客賞を受賞。同期にアンジャッシュ児嶋一哉らがいる元ピン芸人でもあり、福徳が向き合うには適任だったに違いない。

主演の萩原利久、ヒロインの河合優実を筆頭に伊東蒼、黒崎煌代と演技力が評価される若い世代の俳優が顔をそろえた。萩原、河合、伊東は長ぜりふも多いがキャラクターの心情を大事に演じている。一方で、萩原が演じるさえない大学生、その大学生が心奪われた河合演じる女子大生をはじめ、登場人物は個性が強く、見た人によって賛否両論はあるだろう。萩原も役作りにあたり「共感できる部分と、難しい部分があり、キャラクターから入るのは危険だ」と感じたという。

中でも出色だったのは、大学生のバイト仲間を演じた伊東だ。2人きりになって本心を吐露するシーンは、きっと性別、年代を超えて胸を揺さぶられるに違いない。6歳でデビューし“天才子役”の名をほしいままにした伊東も19歳。大人の階段を上る中で演じた、このシーンは伊東自身にとっても、日本の映画シーンにおいても“何か”を残すものになるのではないか。【村上幸将】

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