新型コロナウイルスの感染拡大に伴う3度目の緊急事態宣言が25日、大阪など4都府県を対象に発令され、酒類を提供する飲食店に休業要請が出されました。前例のない“禁酒”に「お酒のスペシャリスト」からは疑問の声が上がっています。

関西を代表する歓楽街、大阪・北新地にある「Bar織田」。棚には約250種類のウイスキーボトルが並びます。世界各国のお酒が楽しめるバーです。経営者でもあり、バーテンダーの織田高央さんは長引く時短要請に応じてきましたが、今回の“禁酒”にやりきれない思いを漏らします。

「この商売がバカにされているか…。そうとしか言いようがない」

兵庫県西宮市生まれの宝塚市育ち。辻学園調理・製菓専門学校を卒業後、1988年(昭63)4月にパレスホテル(東京)に入社。研修を経て、系列の「レストランパレス大阪 ラ・クール」のBAR「ONDINE」に配属されました。 ここで運命の出会いがありました。日本初のソムリエとして知られ、日本ソムリエ協会名誉顧問の浅田勝美さんのもとでバーテンダーの指導を受けました。「いつかは自分の店が持ちたい」。キャリアを重ね、北新地に03年4月1日に「Bar織田」をオープン。今年4月で18年がたちました。どうしたら最高のお酒を提供できるか-。これまでお酒の研究に費やしてきた時間はハンパではありません。

同店では大阪府のガイドラインに沿って、客席の間隔を空け、客の人数制限もし、消毒や換気を徹底してきました。「関西でトップの社交場で、一線でやっているプライドがある」。これまでは飲食の場が感染リスクが高いとされてきました。お酒を楽しんでもらうため、できる限りの感染対策はしてきたつもりです。

ただ、今回は“禁酒”です。織田さんは「今回はこれまでとはちょっと違う。お酒が悪者扱いされている。お酒を生業としている僕らにとっては『死ね』と言われているのと同じです」と憤りを隠せません。

やり切れない思いの奥底には「“禁酒”は僕自身が真っ向から否定されたような感覚」といいます。政府が“禁酒”に踏み込んだことで「今後、接待という日本の文化がなくなっていくかもしれない」と心配します。5月11日まで「Bar織田」は休業要請に応じます。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)