コロナ協力金の不正が疑われる申請が相次いでいます。新型コロナウイルス対策として営業時間短縮に応じた飲食店への協力金をめぐり、大阪府の吉村洋文知事(46)は不正が疑われる申請が府内で約400件あり、慎重に審査していることを明らかにしました。

「なにか、おかしい…」。緊急事態宣言などを受け、府内全域の飲食店から届く「コロナ協力金」の申請ですが、職員らが首をかしげる事例が増えています。

代表的な例として、支給対象外の持ち帰り専門店が店内にイートインがあることにしての申請です。この“虚偽申請”は考えられるケースですが、最近では、もっと手の込んだ案件もあるそうです。

1つの店舗が短時間に名前が切り替わり、“営業”する事例です。まずは午後5時から「A食堂」が開店し、午後9時まで営業します。続いて同じ店舗で午後9時から午後10時まで「スナックB」、午後10時~午後11時まで「バーC」、午後11時から「ラウンジD」に名前を変え、深夜0時まで営業。時間差で1つの店舗で4つの「飲食店」が営業する不自然な形態です。同じ店舗にもかかわらず、複数の申請がありました。

「同一店舗で昼の飲食店、夜のラウンジ、こういったケースはありますが、4つの飲食店となると『何か、おかしい』となります」と府の担当者。

さらに現地に行ってみないと分からないケースもあるようです。

1つの建物の各室を店舗としてオープンした事例では、101号室に「スナックX」、102号室「スナックY」、103号室「スナックZ」。申請があったビルを現地調査すると、「入り口がゴミだらけで人が出入りするスペースもなかった。廃虚でした」と府の担当者。報告を受けた吉村知事も「この廃虚のビルが申請主体になっていた」と驚きを隠せません。かなり悪質です。

はたまた、すでに閉店・廃業した店舗からの“偽装”もあります。書類には閉店する前の客でにぎわっている「写真」を添付し、申請。現在も営業しているようにみせかける事例です。

吉村知事は「いくつか非常に手の込んだ申請もあります。ぜひこういったことはやめてもらいたい。われわれとしても、協力いただいているお店にできるだけ早く、的確に協力金をお渡ししたい」と話し、「こういったことが増えると、審査に時間がかかって、結局、支給が遅れることになりかねない。この申請自体が虚偽申請、詐欺行為にもなる。税金ですから厳正に対処していきたいと思います」と怒りをあらわにしました。

「支給が遅い」との声を受け、府は6月に専従部署の「協力金推進室」を発足させ、140人体制で対応。手続きを簡略化したり、スピードアップを図っています。本当に困っている飲食店に一刻も早く「コロナ協力金」を届ける仕組みを逆手に取る「不正申請」。笑いの街・大阪でもシャレになりまへん。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)