自然体で成長を続ける。日本テレビの岩田絵里奈アナウンサー(26)が昨年4月から朝情報番組「スッキリ」(月~金曜午前8時)のサブMCに就任して1年がたった。大先輩の水卜麻美アナウンサー(35)から受け継いだ初の帯番組で、重圧や壁に当たりながらもがき、今、殻を破ろうとしている。心血を注いで駆け抜けた1年間で感じたことを聞いた。【松尾幸之介】

★初の帯番組

明るい笑顔で朝を彩り、視聴者のいとしの存在となりつつある。岩田アナにとって「スッキリ」は自身初の帯番組。扱うネタは国際情勢からエンタメまで多く、サブMC就任は生活や意識も大きく変えた。

「ニュースや新聞を見て、載っている以上のものを自分で調べたり、問題の背景を考えたり。向き合い方も変わってきました。生活も毎朝4時半に起きて、私は夜は8時とかにはベッドに入る。そんな生活、本当に小学生以来かもしれないです。睡眠時間が足りなくて、頭が働かずに口も回らなくて失敗するというのを本当に避けたくて。夜遅い時間に(他番組の)収録とかが入っていても、それまでに分眠して寝ています。全て『スッキリ』合わせの1年でしたね」

喉元を過ぎれば熱さを忘れるタイプ。今回の大役にも同じ気持ちで挑んだ。今では落ち着いた進行や度胸の強さを感じさせる場面も見られるようになったが、就任当初は悩むことも多かった。

「(昨春で)入社4年目で最低限の経験はしてきた感覚でしたが、『スッキリ』に来てから本当に自分が何もできないということに気がついて。今までやってきたことが全部無に帰す感覚というか。前任者が水卜さんで、ギャップみたいなものは自分が一番感じていました。プレゼンに関しても誰かに助けてもらわないとオンエアが成立していなかったなというのがあったり。あ、向いてないなと感じたり。今までは仕事が『楽しい』だけだったんですよね。なので一番壁とハードルを感じて。こんなにしんどかったのは入社以来初めてで、結構ふさぎ込んでいたかもしれないです。(就任から)半年ちょっとしてから少しずつもやが晴れてきて、今は全然ハッピーですけどね」

コロナ禍で減った直接の対人取材も増え、東日本大震災から11年の今年3月は岩手県の被災地を訪問。今春からは街行く人に直接取材する新コーナー「岩田絵里奈の外回り行ってきます!」も始まった。荒波にもまれながら、1歩ずつ経験を積んでいる。

「街録(街頭録音)は初めてで勉強になりますし、自分の幅が広がるんじゃないかと思っています。リモートになりましたが、最近はウクライナから避難して日本に住んでいる方への取材なども経験しました。やっぱり生で話を聞くと、自分の中での温度感や向き合い方も変わってきます。伝えなきゃいけないという意識が乗るというか、それは大きな変化でした」

★型にはまらず

番組ではメインMCを務める加藤浩次の補佐役も担う。経験豊富な加藤の姿は常に勉強になっている。

「加藤さんって本番直前に流れだけ確認して、あとは本当にフリートーク。それが一番の衝撃でしたね。お忙しい方なのに、誰よりも勉強して真っ正面から向き合っていらっしゃって、本当に尊敬しかないです。フリートークな分、進行順が変わることもありますし、やらない予定のものが急に出てきたり、そこについていくことに最初は苦労して、死んだように立っていました(笑い)。生放送ってすごいなと。生きた心地がしなくて、戦場という感じ。置いていかれないように、ちゃんとサポートできるようになりたいなと思いながらやっています」

加藤と前任者の水卜アナからもらった言葉には共通点もあった。それは型にはまらず、自由にやること。入社から4年間の経験の中で、徐々に素の姿を出していけるようにもなった。

「加藤さんからは『アナウンサーだからとかないから。思ったことは自由に言っていいし、正直でいなさい』と常々言われています。水卜さんからは引き継ぎの時に『私から教えることはないから岩田は岩田のスッキリで、自分の思うように』と言われました。基本的には素のままで出るようにしています。アナウンサーとして、くだけた言い方とかはどうかなと思う時はあるんですけど、自分らしく、ありのままでみたいなところは逆に意識せずそのまま言っています」

★煎餅を手に

私生活もスッキリ仕様に変えた。空いた時間に向かう銭湯と、家でお煎餅を手に、大好きな成分無調整牛乳を飲みながら過ごす時間が至福の時だという。

「本当は『スッキリ』についていなかったら環境を変えて1人暮らししようかなって考えていたんですよ。でも、ついたらそれどころじゃなくて、今は(実家に)しがみついてます(笑い)。家族には食事や気持ちの面でもすごく支えてもらった1年だったなと思います。(恋愛も)今、逆に全く考えてなくて。本当に『スッキリ』と付き合っている感じなんですよね。『スッキリ』以外のこともほとんど考えてなくて。友達とかが結婚していくのも見ていて、(姉の娘の)めいっ子もいるので考えたりするのに、今は全くです。仕事に集中して、そこで一人前になってからそういう他のことを考えたいなと思っています」

今後の目標なども明確には定めず、目の前の仕事へ全力で向かう。朝の帯番組を担う者としての自覚は日々強まっている。

「加藤さんとお仕事させていただいて感じているのは、ただ情報を伝えるだけではなくて、世の中をより良くしたいという気持ちがあって番組をやっているということ。ただの毎日のルーティンではなくて、大きな目標をみんなで共有して、そこに向かって自分のできることをしっかりやりたい、支えたいなと思います。目の前にあることを100%、120%でやることが目標です」

自身のことは「自然派ですかね。ナチュラルテイストです」と形容する。「スッキリ」という大海原で学んだ1年間は、新たな伸びしろを発見する期間にもなった。2年目もいい波に乗り、豊かな成長曲線を描く。

▼「スッキリ」で共演する加藤浩次(53)

普段はいつも明るく笑顔で、どんな人にもわけへだてなく接することができる人。きっと育ちがいいんでしょうね。ハプニングにも強いですよ。普通、1年一緒にやっていれば大体わかるのですが、岩田さんはまだまだわからないところもありますね。コロナで一緒にご飯に行ったりできなかった、というのもあるかもしれないです。可能性を持っている人なので、これから自分というものをどんどん作り上げていろいろ見せてほしいと思います。

◆岩田絵里奈(いわた・えりな)

1995年(平7)8月30日生まれ、東京都出身。医師の父が大ファンのサザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」から命名。父と同じ道を目指すも、理科に苦しみ高校3年時に理系から文転。慶大3年時の夏に1学年上の先輩の助言で、現職を志す。18年日本テレビ入社。同年秋から「世界まる見え!テレビ特捜部」のMCに抜てき。「シューイチ」出演などを経て、20年から「沸騰ワード10」の進行、21年から「スッキリ」サブMCにも就任。座右の銘は「なんとかなる」。163センチ。血液型A。