月組公演「フリューゲル-君がくれた翼-」「東京詞華集 万華鏡百景色」は、兵庫・宝塚大劇場で上演中だ。トップ月城かなと、相手娘役の海乃美月、人気スター鳳月杏、風間柚乃ら、芝居巧者のそろう月組が存分に個性を発揮している。宝塚は9月24日まで、東京宝塚劇場は10月14日~11月19日。

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芝居の舞台は1988年の冷戦下、ベルリンの壁崩壊直前。月城が演じるのは東ドイツの軍人ヨナス。海乃ふんする西ドイツの歌手ナディアが、コンサートのため東ベルリンを訪れ、ヨナスは警護役に就く。当初は反発しあうも、音楽を通じて心を通わせ、東西統一への思いを強めていく。

月城、海乃のトップコンビは、心情変化の機微を丁寧に表現。統一へ異を唱える人民軍大尉ヘルムートに人気スター鳳月がふんし、今作でのダークな部分を引き受けた。下級生時代から芝居心に定評のある風間は、さらにその技量に磨きをかけ、ナディアのマネジャー役を好演している。

作・演出の斎藤吉正氏も「月組らしい芝居の特性が立体的に出せている。月城を中心としたカルテットは、いい意味で自分を犠牲にして芝居ができる」とたたえる。芝居巧者ぞろいの月組の個性を引き出すべく、作品を考えたという。

マジメゆえにクスッと笑える月城演じるヨナス。斎藤氏は主人公像を「言葉は多くなくても、自ら実践して下級生に示す月城の姿にリンクさせた」。月城、海乃コンビは「2年がたち、充実の域」とみて、鳳月には「(下級生の)トップを立てる頼もしい兄貴」と言う。風間には「(下級生時代から)キャリアに似合わぬベテラン」と、カルテットに全幅の信頼を置く。

ショーは「東京」を軸に時代の変遷を描くストーリー仕立て。月城が花火師、海乃が花魁(おいらん)にふんして登場するが、2人は結ばれず、輪廻(りんね)転生を繰り返していく。

和のイメージから一転、「鹿鳴館」場面ではヨーロッパ調へと移るなど、音楽、ダンスにのせて時代の流れを表現する。

作・演出の栗田優香氏は、本拠地デビュー作。「洋装も和装も、見たい衣装をつめこんだ」と笑う。表現力に比類ない月城、海乃のコンビには「見たかったものを見せていただいた」と、満足そうに語った。【村上久美子】