冬ドラマがスタート。内容はもちろん監督目線でも楽しみがひとつある。それは“新しい俳優”の発掘である。芝居がいいなとか、芝居はもうちょいだけど華があるな、なんて目線でいつも見ている。

さすがにゴールデン帯の連続ドラマであればポッと出の俳優は少なく、初めて見る俳優でも人気アイドルグループはじめ、仮面ライダー戦隊もの、有名雑誌のモデル出身などのケースが多い。すでに若い子には人気だったり、一定のジャンルではすごく有名な子たちである。

アイドル出身俳優。昔は芝居ができないとやゆされていた時代もあったが、今はその母数が増えたことからなのか、男女問わずいい俳優が多い。そもそものセンスがある上、ある程度の訓練を行えば、同年代の俳優と引けをとらない演技をする。また人気もあることから、キャスティングされる率も高く、結果どのグループにも1人は俳優として成功しているイメージがある。

そこで今回紹介したいのは元AKB48メンバーの川栄李奈(28)。20歳でアイドルを卒業し、女優の道へ。バラエティー番組でのおバカキャラが定着していたが、気が付いたら女優としてのキャリアを着実に積み、朝ドラの「カムカムエヴリバディ」でトリプル主演を果たす。AKBだと前田敦子や大島優子も女優として成功しているが、さらにその上をいく出世頭といっていいだろう。

放送中のドラマ「となりのナースエイド」では、医療ドラマとしてナースエイドという新しい職種にチャレンジ。放送回をみる限り、テンポよく見やすい作品だが、クセのある共演者に加え「二転三転の裏がある」との宣伝文句が気になる。メインビジュアル自体も謎に包まれており、ここから確実に何かが起こっていくのだろう。

肝心の演技自体も一本筋が通っていて主役としての役割を十分に担っている。トータルで非常に好印象、今となっては昔の姿は演技していたのかと錯覚するぐらいである。

アイドル時代を見る限り、その後、朝ドラ・連ドラの主演をするとは夢にも思わない。アイドル出身俳優の道しるべになるよう、今後の活躍にも大いに期待したい。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。直近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」が公開。