選手村予定地周辺での交通実証テストの様子。75台のバスが隊列を組んで走行する
選手村予定地周辺での交通実証テストの様子。75台のバスが隊列を組んで走行する

【先週の数字】75台

東京オリンピック・パラリンピック開会式の選手輸送を想定した交通実証テスト(25日)で使用された大型バスの台数です。建設中の選手村(中央区晴海)から新国立競技場周辺(新宿区)までの約20キロを、隊列を組んで走行する様子はなかなか壮観でした。

実際に乗ってみましたが、事故や渋滞もなかったので、30分かからず到着。レインボーブリッジと東京タワーが1度に見える夜景や、SF映画「惑星ソラリス」(72年)にも登場した首都高の風景など、車窓からコンパクトに東京を体感できる感じ。世界中から来る選手の皆さんには、移動時間も楽しんでもらえそうで、これはこれでおもてなし感があります。

選手村予定地を出発したバスは、まずレインボーブリッジを通過
選手村予定地を出発したバスは、まずレインボーブリッジを通過

選手村を出て、晴海ランプから首都高(10号晴海線)に乗り、都心環状線、4号新宿線を走行して外苑出口で降りるルート。取材陣が乗った22号車は先頭車から3分遅れの午後6時56分に出発しました。首都高に乗ると、これから渡るレインボーブリッジや、東京タワーを中心とする東京の夜景を一望できます。台場あたりの海は、電飾されたたくさんの屋形船が浮かんでいて、上から見るとかなり壮観です。

夜のレインボーブリッジを渡り、芝浦あたりもスイスイ。ここまで、出発から約10分。その先は、浜崎橋ジャンクションから環状線に入り、一ノ橋ジャンクション→飯倉トンネル→三宅坂ジャンクションから4号線→赤坂周辺→外苑、という流れ。立体交差、トンネル、連続するカーブという、いかにも首都高らしい光景は、巨匠タルコフスキーが「惑星ソラリス」で未来都市の風景として描いたルートとだいたい同じ。湾岸エリアの夜景とはまた別の東京らしさを体感できます。64年の東京五輪のために作られた首都高を、56年後に再び選手団が通ることにも感動があります。

選手村から新国立競技場までのルートでは、バスの車窓から東京タワーも間近に見える
選手村から新国立競技場までのルートでは、バスの車窓から東京タワーも間近に見える
バス輸送ルートは、首都高三宅坂ジャンクションから4号新宿線へ。この輸送テストのため「外苑出口通行止」の電光表示
バス輸送ルートは、首都高三宅坂ジャンクションから4号新宿線へ。この輸送テストのため「外苑出口通行止」の電光表示

この日のバス輸送テストは、選手の降車場所のひとつに予定されている絵画館前に到着。22号車は、先頭車と同様、全行程27分での到着となりました。当初、所要時間は40分を想定していたため、実験結果に組織委員会も「おおむね良かった」とひとまず高評価。この日のために数え切れないほどの観光会社のバスが調達され、外苑周辺には熱心なバスマニアの人たちが色とりどりの75台の写真を撮りまくっていたのもハッピーな光景でした。

バスの隊列は、選手の降車場所のひとつに予定されている外苑・絵画館前に到着
バスの隊列は、選手の降車場所のひとつに予定されている外苑・絵画館前に到着

テストは75台で行われましたが、開会式当日は300台規模での移動が想定されています。高速道路渋滞というもうひとつの東京名物に巻き込まないためにも、本番当日もスムーズな道路状況を祈りたいところです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)