【今週の言葉】「皆さんにかわいがっていただいて、8年も続けられたことに感謝しかない」

13日に放送されたフジテレビ系昼ワイド「バイキングMORE」で、来年3月での番組終了に言及したMC坂上忍さん(54)の言葉です。「来年55になりますので、どこかのタイミングで、動物好きのおじさんとしての時間をもうちょっといただけませんかというお話をさせていただいた」。動物保護活動に注力するため、2年ほど前から区切りについて考え始めていたとのことです。

14年3月に行われた「バイキング」制作発表で、いい意味での浮きっぷりが印象に残る者としては、卒業、終了にいろいろ感慨深いものがあります。

当時は曜日ごとにMCが異なり、会見は月曜MCの坂上さんら全曜日勢ぞろいで行われました。たまたま入場口の真横にいたので、登壇直前の彼らの声が聞こえてきたのですが、お笑い陣は「笑っていいとも!」の後番組というアウェー感に、自虐で鼓舞し合って異様なカラ元気。そんな中で、「大変なことを引き受けと実感しています」と通常運行でやる気をみなぎらせていたのが坂上さんでした。当初伝えられていた番組タイトルが直前になって「バイキング」に変更になったことにも、MCとして不満を述べていました。

17年にインタビューした際にこの時の心境を尋ねると、「唯一のよそ者なので、自分にできることを一生懸命やるしかないから」と明快。よそ者らしいジャンル不明の試みがいくつもあり、サンドウィッチマンの「地引き網クッキング」のような名物コーナーも生まれました。

好調な月曜班に番組を託す形で、15年から坂上さんが全曜日のMCに。トークバトルを打ち出した16年あたりから発言がネットニュースをにぎわせ、視聴率が1%台から4倍増。17年には悲願の8%台も記録しています。トークバトルを盛り上げる表現の枠は日々狭くなるばかりですが、「みんなが思っているより表現の柵はもうちょっと向こうまであるから、行っていいんじゃないのという感覚」「どうせ終わるなら、試すべきことを全部試したい」と語っていたのが印象に残ります。

卒業を考え始めたという2年前は、タイトルが「バイキングMORE」になり、制作がバラエティー部署から情報制作局に変わった時期と重なるんですよね。

今どきのまじめさはアップしましたが、「もうちょっと向こうまである柵」の周辺で戦いたい坂上さんにとっては、一気に柵を狭められてしんどそうに見えたのも事実です。発言ひとつひとつに局アナのフォローが入り、ネットの炎上より内輪の顔色対策の方が大変そうというか。良くも悪くも強烈な個性を他局と同じ立て付けに封じられ、はた目にも手詰まり感は否めません。

自称「よそ者」の戦いは8年で卒業表明という展開になりましたが、これまでの挑戦と同様、試すべきことは全部試せたのかは気になるところです。始まった時から「どうせ終わるなら気持ちよく終わりたい」を目標にしてきたこの人の、残り3カ月半に注目したいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)