映画「ろくでなし」(奥田庸介監督、4月15日公開)ワールドプレミアが2日、東京・渋谷のユーロライブで開催され、上映後の壇上で、観客を前にした、前代未聞の“公開大げんか”が行われた。

 「ろくでなし」は、映画監督を講師に迎え、俳優志望の学生と映画を製作、発信することを目的に、山本政志監督が12年から主宰する実践映画塾「シネマ☆インパクト」の企画としてスタートした。その後、製作規模を拡大し一般の映画として製作することになったが、奥田監督が書いた脚本の初稿を、プロデュースした山本監督がリライトしたことに端を発し、双方の間に亀裂が生じた。完成と同時に奥田監督と山本監督は完全に決裂したという。

 映画の公開まで2週間を切る中、空中分解となった状況を何とかしようと、主演の大西信満(41)が企画し、映画の上映後に奥田監督と山本監督の2人を登壇させ、観客の前で思いのたけを話す場を設けた。

 山本監督が「俺が自分の世界を破壊しようとしていると誤解しているんじゃないか。ムキになって初稿に戻す作業をした」などと主張すれば、奥田監督も「何かを言うと、山本さんは怒鳴って怒って押しつぶす。同じ土俵でディスカッションできない」などと反論。約40分、続いた“公開大げんか”は、双方が立腹し、降壇して終わった。

 その後、あまりにも壇上の雰囲気が悪くなったからと、大西と共演の渋川清彦(42)遠藤祐美が登壇した。渋川は「大西が真摯(しんし)にこういう企画をやったから、仲良くなればいいなと思ったんだけど…」と言えば、大西は「甘かったですね。公開直前に監督とプロデューサーがケンカして、実質、宣伝も担当者1人が回している。我々俳優はチームワークが良くやっています。どうか皆さん、力を貸してください」と客席に呼び掛けた。

 大西は“公開大げんか”後、ニッカンスポーツコムの取材に応じた。「全国(7カ所)で上映が決まった中で危機的な状況。このままじゃ、あまりに寂しいと、けんかを公開してネタにしようと考えた。舞台上で話したことは仕掛けも何もなく本音を言っており、来てくれたお客さんの後味が悪いだろうと、最後に登壇しました」と説明した。

 その上で「残念ながら和解はなりませんでしたが、終わった後、2人と話して、険悪な感じじゃなくガス抜きできた感じで良かったと思いました。お互い、大人だし映画は成功してほしいと思っている。意地を張り合っているだけで憎しみあっているわけじゃない。そのことが確認できたので成果があった」と話した。

 奥田監督も、初日舞台あいさつに登壇することを誓い、公開に向けて半歩、前進した。【村上幸将】