宝塚歌劇団出身で、ドラマ「岸辺のアルバム」などで知られる女優八千草薫さんが24日に死去していたことが28日、分かった。88歳だった。

八千草さんは17年12月に人間ドックで膵臓(すいぞう)がんと分かり、翌18年1月に7時間に及ぶ摘出手術を受けた。その後は抗がん剤治療などを受けて順調に回復、同年8・9月には舞台「黄昏」に主演し、ドラマ収録にも参加した。

しかし、19年1月に熱が出たため、病院で検査を受けたところ肝臓にがんが見つかった。そのため、4月スタートのテレビ朝日系ドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」にヒロインしの役で出演を予定していたが、降板。風吹ジュンに代わった。

八千草さんは親交のある倉本聡さんの脚本ということもあって、仕事の続行を希望したが、医師の説得で降板を了承。ただ、前作「やすらぎの郷」で演じた九条摂子役として前半部分で出演しており、摂子役としてがん公表から3日後に極秘で撮影に参加し、撮り終えていた。また、復帰にも前向きで、所属事務所の公式サイトに「体調を整えまして、より一層楽しんでいただける作品に参加できるように帰ってまいります」とつづっていた。

八千草さんは47年に宝塚歌劇団に入団。美貌の娘役トップスターとして活躍し、57年に退団。55年に映画「乱菊物語」で監督と主演女優として出会った、19歳年上の谷口千吉監督と退団直後に結婚した。2度の離婚歴があった谷口監督との結婚に周囲は反対したが、八千草さんは恋を貫き通した。当初は結婚後は家庭に入るつもりだったが、谷口監督は「女優も続けなさい」と後押しした。

その後もドラマ「岸辺のアルバム」「わたしの可愛いひと」、映画「雪国」「ハチ公物語」「ゆずり葉の頃」、舞台「二十四の瞳」「細雪」などに主演。清純派から優しいお母さん役まで幅広く演じた。山登りが趣味で、谷口監督とともに日本の山々を登ったが、07年に死別した。97年に紫綬褒章、03年に旭日小綬章を受章した。