樹木希林さんの娘でエッセイストの内田也哉子さん(43)が1日、都内で行われた広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」の授賞式に出席した。

樹木さんが40年間にわたり出演した、富士フイルムのテレビCMを再編集したスペシャルムービー「樹木さん2018年末特別篇」がクラフト賞演技賞を受賞し、也哉子さんは樹木さんの代理として登壇した。

樹木さんが出演した富士フイルムのCMは「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」というキャッチフレーズで人気となった。

ステージに立った也哉子さんは開口一番「見ての通り、母そっくりだと言われてきました。正直、嫌だなと思っていました」と切り出すと、「その『嫌だな』の筆頭格が、富士フイルムの綾小路さゆりさんでした。美しくない方の人で、白塗りで」と、母が演じたキャラクターに複雑な思いを抱いていたことを笑い交じりに明かした。樹木さんについても「母ははみ出した人が好きで、人のこっけいなところをいかにチャーミングに見せるかを考えている人でした」と語った。

母の演じたキャラクターをネタにからかわれることの多い子ども時代だったが、次第にとらえ方が変わったという。「40年近くの長い年月を振り返ると、嫌だと思っていたさゆりさんがお正月の風物詩になっていて、長い年月を費やさないと見えないものもある。年を経ていとおしいものになることもあると今知って、子供の頃の自分に教えてあげたい」とほほ笑んだ。

また「早変わりする広告の世界で長くお茶の間とともに生きてきた奇跡。母が亡くなって1年たってなお、この奇跡を共有できるのはぜいたくなことだと思います」と感慨深げに語り、「そんな面白いことが人生には転がっている。長い間CMを作ってくださった方々、お茶の間の皆さまにお礼申し上げます」と結んだ。

昨年9月に亡くなってからもさまざまな賞を受賞し続ける樹木さんに代わり、式典に出席する也哉子さんを何度か見てきた。独特の落ち着いた話し方とユーモアに満ちた言葉選びには毎度引き込まれる。そして一字一句逃すまいと手が痛くなるくらいの勢いでペンを走らせている。

樹木さんがエピソードに事欠かない人だということもあるのだろうが、それを差し引いても、也哉子さんはスピーチの名手だと思う。