女優沢尻エリカ容疑者(33)が16日、合成麻薬MDMAを所持したとして、麻薬取締法違反の疑いで、警視庁組織犯罪対策部第5課に緊急逮捕された。「私のものに間違いありません」と容疑を認めている。07年主演映画「クローズド・ノート」の初日舞台あいさつで、不機嫌に「別に」と発言して騒動に発展。その後もトラブルが相次ぎ、一時は「お騒がせ女優」と呼ばれたが、20年NHK「麒麟がくる」で大河ドラマに初出演するなど、最近は順調な女優活動を送っていた。

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警視庁組織犯罪対策部第5課によると、逮捕容疑は東京都目黒区の自宅で16日朝、MDMAの粉末を0・09グラム所持した疑い。警視庁に「違法な薬物に関与している」などと情報提供があり、同課が捜査していた。

捜査関係者によると、沢尻容疑者は15日夜、東京・渋谷のクラブへ行き、16日朝に帰宅した。同日午前8時すぎ、捜査員が沢尻容疑者の都内の自宅を訪れ、家宅捜索したところ、棚に置いてあったアクセサリーボックスから、チャック付きの小さなポリ袋に入った白いカプセル2錠が見つかった。以前から自宅にあったとみられ、継続的に使用していた可能性がある。カプセルは風邪薬などと同じ形状で、うち1錠が鑑定でMDMAと判明。同日午後1時半ごろ、緊急逮捕された。取り調べには素直に応じているという。

沢尻容疑者は母親と2人暮らし。家宅捜索の際にも母親がいたという。残る1錠と尿の鑑定を進め、押収した携帯電話などを解析して入手経路などを調べる。

同日午後7時ごろ、沢尻容疑者は警視庁本部からワンボックスカーで東京湾岸署に移送された。報道陣約100人が集まったが、車内はカーテンが閉められ、表情をうかがい知ることはできなかった。

05年に映画「パッチギ!」などで若手実力派女優として評価される一方、物おじしない言動が「女王様キャラ」と見られ、「エリカ様」とも呼ばれた。「別に」発言の騒動後もトラブルが相次いだことから、一時は「トラブル女優」のレッテルを貼られた。

09年7月に皆既日食イベントで奄美大島に滞在中、原付き扱いの「フル電動自転車」に乗ったがナンバーが未登録で、道交法違反の疑いで地元警察から事情聴取を受けたこともあった。同年9月末に「契約違反があった」として、前所属事務所から契約解除された。12年5月に週刊誌で大麻吸引疑惑が報じられるなど、薬物疑惑を何度か報じられたこともあった。

プライベートでは、09年1月にクリエーター高城剛氏(55)と結婚。泥沼の離婚劇を経て、13年12月に離婚が成立した。

11年にエイベックスと契約後は地道に女優活動を行い、「トラブル女優」の異名を返上した。約5年ぶりの女優復帰作の12年主演映画「ヘルタースケルター」(蜷川実花監督)でオールヌードを披露。興行収入20億円を超えるヒットとなった。昨年は主演作2本を含む4本の映画に出演。今年はテレビ朝日系ドラマ「白い巨塔」や9月公開の映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」(蜷川監督)に出演。来年は大河ドラマ「麒麟がくる」で織田信長の妻役に決まっていた。

現在のCM契約は5社。好感度を取り戻し、幅広く活躍していた中での突然の逮捕だった。

◆MDMA 覚醒剤と似た化学構造をした合成麻薬の一種。錠剤型で「エクスタシー」「バツ(×、罰)」「タマ」とも呼ばれる。1989年に麻薬に指定され、覚醒剤のような興奮作用とLSDのような幻覚作用を持つ。摂取すると、不安感、不眠から精神が錯乱状態になったり、記憶障がいを起こしたりする。乱用を続けると、心臓や肝機能の障がいのほか、ショック症状から死ぬこともある。

麻薬及び向精神薬取締法の罰則は▼輸入・輸出・製造で、営利目的=1年以上の有期懲役または情状により500万円以下の罰金の併科、それ以外=1年以上10年以下の懲役。▼所持・譲渡・譲受・使用で、営利目的=1年以上10年以下の懲役または情状により300万円以下の罰金の併科、それ以外=7年以下の懲役。

今月10日には、有名金融トレーダーKAZMAXこと吉沢和真容疑者(30)が、MDMAによる麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたばかり。渋谷のクラブで薬物を所持しているとの情報があり、尿検査で陽性反応が出た。本人は逮捕時に否認したという。

◆沢尻(さわじり)エリカ 1986年(昭61)4月8日、東京都生まれ。父は日本人で母はフランス人。01年「ヤングジャンプ制服コレクション」準グランプリに選ばれ、本格的に芸能活動を始める。05年映画「パッチギ!」で各新人賞を獲得。ドラマは「1リットルの涙」「タイヨウのうた」「ファースト・クラス」など、映画は「へルタースケルター」「新宿スワン」など多数出演。09年にクリエーター高城剛氏と結婚、13年に離婚。