新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが利かない。政府が7日、東京など7都府県に緊急事態宣言を出すに至ったが、東京都の8日の感染者数は1日としては最多の144人、同日の全国の感染者数も521人と、1日あたりの感染者数が初めて500人を突破し、本稿を書いている9日昼の時点で収束の兆しは見えない。

新型コロナウイルスは、芸能界にも暗い影を落としている。テレビ局や映画各社からは、撮影や収録、ロケ、公開の延期や中止の発表が相次ぎ、4月の新年度以降は会見や舞台あいさつなど、いわゆる芸能イベントはほぼ皆無と言ってもいい状況だ。感染拡大防止のためインタビューなどの対面取材や打ち合わせも控える流れになっており、テレビのワイドショーでも、MCやコメンテーターがインターネットなどを利用した“テレワーク出演”することも日常化しつつある。

親交がある芸能人からは「日に日に仕事がなくなっています」という声が異口同音に聞かれる。若手どころか、連続ドラマで主演を張るレベルの俳優も例外ではない。ある芸能事務所の関係者は「このまま2、3カ月、この状態が続けば、本当に収入が0に近くなるタレントも出てくることが予想される。本当に大変な状況」と深刻な事態を想定していると吐露した。

事務所から、自宅待機を求められているタレントもいる。仕事がない中、外に出掛けることで感染するリスクを避けることが第一義だろう。ただ、不要不急の外出の自粛が政府から要請されている中、出歩いたり会食をしているところを撮影されてSNSにさらされたりなどして、批判の的になるリスクを避ける狙いもあるようだ。食品を買う時だけ、外に出ているというあるタレントは「絶賛、引きこもり生活継続中です!」と苦笑いしている。

芸能やエンターテインメントには、世の中を明るくする力がある。その中心に立つ芸能人は、ファンをはじめとした一般の人々の前に出たり、テレビやラジオといった公共の電波に乗ったり、弊紙を含めた新聞、雑誌、インターネット媒体に登場する際、基本的には笑顔だ。そんな芸能人だって、自宅待機を強いられ続ければ、時に気持ちがめいったり、仕事が入らない状況で先行きに不安を感じるのは、当然の話だ。

そんな中でも、思わぬ形で出来てしまった時間を利用し、普段、多忙な中で見ることが出来なかった映画やドラマを見たり、室内で出来るトレーニングをしたり、自分磨きに取り組むタレントは少なくない。多忙なあまり普段、十分な時間を取ることが出来ない家族らとの時間を大切にして、自らを見詰め直しているタレントもいる。そうした芸能人たちの声をお届けする連載「明日のために~今 私たちにできること~」が本紙で8日付から随時掲載でスタートした。その声を真っすぐ受け止めて、伝えていきたい。【村上幸将】