YouTubeチェックを日課にしているが、「夕闇に誘いし漆黒の天使達」(以下、夕闇)というグループの「【検証】県が決めたガイドラインを順守してライブをやったらどうなってしまうのか?」というタイトルの動画が目に留まった。

夕闇はバンド活動と平行して動画制作を行う4人組で、大喜利やネタ企画などを中心に投稿している。10日にアップされた先述の動画は少し毛色の違うもので、彼らが拠点とする神奈川県が作成した「新型コロナウイルス感染症拡大を防止するために行っていただきたい取組」のチェック項目をクリアしながら、ライブを開催した場合の「もしも」の世界を見せる内容だった。

従業員と客の衛生管理に始まり、ライブ会場や使用設備の消毒徹底は当然のこと、客同士のソーシャルディスタンス確保などを丁寧に説明。ライブ開始前には、ボーカルの小柳さんが「絶対に大きな声を出さないでください。心で大きな声を出してください。手を横に出すとソーシャルディスタンスが崩れるので、手は上に」となどと観客に向けて周知する前説も行った。いずれも「従業員及び来客等の手洗い・手指消毒」「客席、テーブル、利用設備・機材等についての消毒」「客等へ大声での発生を控えるよう周知」などガイドラインに正確に則ったものだ。動画では400人のキャパでも「客と客の間を2メートル以上確保する」ため最大収容人数は10人で、チケット代も3万円にはね上がっていた。

ステージからの飛まつを防ぐため、出演者はマスク着用の上、眼前にシートをたらして登場。合間のMCでは「俺たちバンドマン、バンドが好きなみんなは大変な時期かもしれない。けど俺はみんなで乗り越えていきたい。今は耐えよう、俺たちで耐え抜こう。また楽しく笑ってさ、ライブハウスで遊べる日が来るように」と熱く訴えていい感じに次の曲につないだのだが、「30分に1回換気をしなくちゃいけなくて。ちょっとお待ちくださ~い」とイントロで演奏を遮り会場ドアを開ける展開には笑ってしまった。極端ではあるが、「換気設備による換気、または窓の開閉による毎時2回以上の換気」もガイドラインに記されている。

時折笑いながら見ていたが、いや、これが現実だよなと急に我に返った。この動画のサムネイル画像の中央には「これでライブと言えますか?」と赤字で記されており、バンドマンのやり場のない思いや本音を垣間見た思いがした。

東京では、ライブハウスに対しては18日まで休業要請が続く見通し。営業が再開されても、かつてのように会場を満員に埋めることははるか先になるだろう。YouTubeでライブ映像を解禁してくれるアーティストもいて、それはそれでありがたく楽しませてもらっているが、そろそろ生のエンターテインメントに触れたい。