東京・歌舞伎座で13日、松本幸四郎(47)市川猿之助(44)片岡愛之助(48)中村勘九郎(38)中村七之助(37)が出席して、「八月花形歌舞伎」(同1日初日)の制作発表会見が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、3月以降休演していた歌舞伎座が再開し、5カ月ぶりの興行となる。

幸四郎は「ついにこの日がやってきました。いろんな可能性を考えて興行できる。役者として幸せです。とても責任ある一座となります。精いっぱい務めるのみです。歌舞伎座で芝居ができる幸せを感じながら、存分につとめきりたい」と話した。公演は4部制で、各部1演目。幸四郎は、第4部の「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店」に出演する。

猿之助は「みんなこの日を喜んでいます。ただ、初日が開けられる保証はありません。これからの状況を見守りつつ、演劇がこれからどうなるかを模索していきたい」と慎重さを見せ「これから先の演劇のありかたが100年200年のスパンで変わってくる。転換期ととらえている」と話した。

猿之助とともに第3部の「吉野山」に出演する七之助は、コロナ禍や豪雨被害に触れ「この状況で何をやってるんだ、とおしかりを受けるかもしれませんが、舞台役者は舞台に立たないと何もできない。新しい歌舞伎の第1歩を共有しましょう」と呼び掛けた。

愛之助は第1部の「連獅子」に出演する。飛沫(ひまつ)感染防止のために、掛け声も禁止となることについて「SE(サウンドエフェクト)を提案したんですが、却下されました。SEが入ると、お客様が『あ、声掛けていいんだ』と思ってしまうということで」と苦笑いした。

第2部の「棒しばり」に出演する勘九郎は「『棒しばり』は長い棒に(両手を)縛られる演目で、ソーシャルディスタンスが一番保たれます」と笑わせつつ、興行再開について「うれしくは思っていますが、責任ある行動を取らなくてはならないと、今後の歌舞伎公演に影響が出てくる」と、気を引き締めた。

ロビーやトイレでの密な状態を避けるため、幕間は設けない。各部ごとに完全入れ替え制で、約1時間かけ、換気、消毒、清掃を行う。通常なら1808人収容(幕見席除く)だが、前後左右を空け、1、2階桟敷席も使用しないので、823人で満員となる。一幕見席の販売はしない。