新型コロナウイルスの集団感染が発生した舞台「THE★JINRO」で、会場の東京・新宿シアターモリエールが業界のガイドラインに従った感染防止策を徹底していなかったことが14日、分かった。

主催のライズコミュニケーションも、当初予定した別の小劇場に出した上演案では、ガイドラインに沿ったソーシャルディスタンスなどが保てないと難色を示されたため、急きょシアターモリエールに変更したことも判明。あやうい公演実態だった可能性が浮上した。

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31の小劇場が加盟する「小劇場協議会」はこの日、公式サイトで、加盟するシアターモリエール側に確認作業をして判明したとして、同劇場においては協議会のガイドラインに沿った感染防止策が徹底されていなかったと発表した。このガイドラインには「座席は最低でも1席以上あける」「公演関係者はマスク着用」「終演後の出演者と面会の中止」などがあり、「JINRO」では一部が守られていなかった可能性がある。この日、協議会の臨時総会が開催され、感染防止策徹底などが話し合われた。

さらに、主催ライズは都内の老舗小劇場での上演を決めたが、1カ月前の打ち合わせの際、合意に達しなかったとの証言も浮上した。この老舗小劇場側では「公演について主催者と打ち合わせを行う中で、当劇場のキャパシティーでは予想来場者に対して、国および東京都が推奨するフィジカルディスタンスを保てないという結論に達し、キャンセルという流れになった」と説明する。安全が確保されないとの判断からの物別れだったが、ライズ側は会場を急きょシアターモリエールに変更したという。出演者・スタッフ・観客で計37人が陽性、800人の観客と50人の出演者・スタッフの計850人が濃厚接触者に指定され国内初の劇場クラスターになった。

また、同舞台の陽性の観客16人の多くは6月30日から7月5日までの公演を複数回観劇したという。30日10人、1日11人、2日7人、3日16人、4日13人、5日6人で、1人平均4回見た計算となり、熱心なリピーター客が多かった。

さらにライズ主催で8月に予定した舞台「私が恋した王子様」「心理試験」「素敵なカミングアウト」の中止が決定、7月14日初日の舞台「SUNFLOWER」が直前に中止になった。出演者の1人が観劇し、濃厚接触者指定されたためという。陽性となった映画コメンテーター有村昆氏と7日収録のテレビ番組で共演したフリーアナ竹内香苗が、14日放送のTBSラジオ「伊集院光とらじおと」の出演を見合わせるなど、余波が広がっている。