第33回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞で監督賞を受賞した映画「スパイの妻」の黒沢清監督(65)が、受賞発表当日の28日に文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜午後1時)に生出演した。

同監督は、自身の地元・神戸の1940年代を舞台にした作品を撮影するにあたり「ここだけの話…お金がかかってない」と自ら暴露。その上で、NHKの全面協力を受けた中で、大河ドラマ「いだてん」のセットを使って撮影できたことが大きかったと明かした。

黒沢監督は、番組のコーナー「大竹の言いたい放題」の年末映画特集に出演。大竹まこと(71)が、この日から冬休みに入ったため、月曜パートナーの阿佐ケ谷姉妹と2代目アシスタントに砂山圭大郎アナウンサー(45)と語り合った。

製作の経緯を聞かれると「たまたま、僕が神戸出身者ですから『神戸で撮らない?』と。自分の出身地で撮る発想がなかった。『どんなのがいいの?』と言って、話が来たのが『スパイの妻』だった」と語った。その上で「ストーリーは面白かったが、1940年代が舞台…無理でしょ、と。神戸には当時の風景が残っていないし、ものすごいお金がかかる」と、当時の率直な思いを語った。その上で「ラッキーだったのはNHKさんが全面協力してくれて『いだてん』のセットを使い回した。これは、ラッキーでした。あまり言わないでくださいね」と笑った。

この日、黒沢監督はスタジオに、日刊スポーツ映画大賞映画大賞・石原裕次郎賞で受賞した監督賞の賞状と、故黒沢明監督が描いた絵コンテがレリーフ(浮き彫り)として使われている盾を持参した。「僕も、まだよく見ていないんですよ。もう…あの、よもや、そんな賞をいただけると思っていなかったので光栄。この賞があったから、いつも拝見している阿佐ケ谷姉妹とお会いできた」と、受賞を受けて、決定した同番組の出演で、阿佐ケ谷姉妹と対面できたことを喜んだ。「同じ衣装を着ているんですね。余計、うれしさが…大分、前から知っておりましたしテレビで見ない日がない。緊張しております」と口にすると、阿佐ケ谷姉妹も「どこかの誰かに吹き込まれたんですか? 黒沢監督のお口から名前が出るだけでも光栄」と恐縮した。

黒沢監督は、阿佐ケ谷姉妹から「昔、私たちも芝居をかじっていて、その界隈の人から(黒沢監督のゲスト出演が)うらやましいと言われた」と言われると「こちらこそ、まさか阿佐ケ谷姉妹さんとお会い出来るとは。帰ったら、すぐに知り合いに言い触らします」と笑いながら返した。

阿佐ケ谷姉妹の姉江里子は「監督のお名前は存じ上げているし、映画も幾つも撮られているのを知っている。ホラー映画があまり得意ではないけれど『クリーピー』(16年)は恐怖の中でも見てしまう世界観」などと、黒沢監督作品の感想を語った。

その上で、妹の美穂と「スパイの妻」を、それぞれ別の部屋で見た結果、感想が違ったと語った。2人の間で意見の相違があったのは、主演の蒼井優演じる福原聡子と高橋一生演じる貿易会社を営む夫・優作の、その後だ。美穂が「ラストの夫婦のあり方で意見、解釈が分かれた」と言えば、江里子も「その先、夫婦はどうなったのか?」と疑問を投げかけた。

黒沢監督は「評論家のような言葉で、そこまでちゃんと見ていただけたのかとうれしい」と感謝した。その上で「結末、どうなんですかね? 僕も分からないというか。分かっていない人が、ほとんどじゃないですか?」と続けた。

スタジオが沸くと、黒沢監督は「ここだけの話…結末はあんなじゃなかった。脚本にも何もない。撮っている最中は、僕も想像していない。あらかた編集した時…先はあるなと。その先を想像し、作ったので蒼井優さん、高橋一生さんも知らない。自分でも面白い経験でした」と製作の裏側を明かした。そして「(ラストのその先の解釈は)見ている方に、お任せです」と言い、笑った。