世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭で最高賞の金熊賞を争うコンペティション部門に、濱口竜介監督(42)の新作映画「偶然と想像」の出品が決まった。11日、映画祭事務局が発表した。濱口監督は、18年に「寝ても覚めても」が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されており、世界3大映画祭のコンペ部門出品は2度目となる。

「偶然と想像」は、偶然と想像をテーマにした3話オムニバス映画で、濱口監督初の短編集となる。同監督が、自身の15年の映画「ハッピーアワー」などをプロデュースした高田聡プロデューサーとともに企画を立ち上げ、19年夏から約1年半をかけて製作。脚本も全て同監督自身が手掛けた。

第1話「魔法(よりもっと不確か)」には、若手女優の中でも昨今、注目度が増している古川琴音(24)と中島歩(32)玄理(34)が出演。第2話「扉は開けたままで」には、屈指の演技派として多数の映画に出演を続ける渋川清彦(46)、森郁月(32)と甲斐翔真(23)が出演。第3話「もう一度」には占部房子(43)と河井青葉(39)が出演する。

濱口監督は「『偶然と想像』は、私にとっての初の短編集です。短編映画という形式にはずっと大きな可能性を感じていましたが、現在の映画製作サイクルの中では短編用の上映枠がないという『出口』の問題がありました。そのため今回は、『偶然と想像』という統一したテーマのもと3話を制作し、長編映画サイズの短編集となりました」と企画について趣旨を説明した。その上で、ベルリン映画祭コンペ部門出品について「ベルリン国際映画祭に本作を正式招待いただいたことへの感謝を申し上げます。歴史ある映画祭のコンペに選出されることは、とても勇気づけられることでした。キャストやスタッフの仕事の素晴らしさが認められたようで、うれしく思っています」と喜んだ。

ベルリン映画祭は例年、2月に開催されるが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、11~21日に予定されていた映画祭を、3月と6月に2分割して開催する。3月1~5日までの日程でオンラインで業界関係者向けの試写を行い、コンペ部門の受賞作などを決める。そして6月9~20日にサマースペシャルと題した上映イベントをベルリン市内の10会場で開催し、授賞式を開催する。

「偶然と想像」は日本国内での上映は未定で、ベルリン映画祭での上映がワールド・プレミアとなる。濱口監督は「コロナ禍のために映画祭期間中に、ベルリンの地を踏めないことは残念ではありますが、『偶然と想像』と多くの観客が出会う契機となることを願っています」とコメントした。