寺田心(14)が、公開中の映画「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成」(曽利文彦監督)の二面性のある役柄で、新境地を見せている。人気子役から青年へ。まだあどけなさが残る愛くるしい瞳の奥には、大人顔負けの仕事にかける情熱があった。【大友陽平】

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「鋼の錬金術師」では、舘ひろし(72)演じるアメストリス国軍の最高指導者、キング・ブラッドレイの息子役を演じた。二面性のある役柄だ。

「お話をいただいてから原作漫画も全部買って読み込みました。セリムは人前ではものすごくお利口さんなんですけど、裏ではプライドとしてホムンクルス(人造人間)の長男として一番強い男。それぞれに差をつけたくて、声の高低を意識したり、目つきを変えたりしてみました。ダークな役柄は初めてでしたが、やったことがなかったからこそ、すごくワクワクしました」

撮影当時はまだ小学生で、声変わりが始まる時期でもあった。身長も20センチ近く伸びた。

「難しかったです。声の高低差をつけようと思って、低くしてみたんですけど、作品を見た時に、イメージよりは高いなって…(笑い)。今の方が低い声は出せるかもしれないです」

誰もが経験する変声期。昨年公開の「妖怪大戦争 ガーディアンズ」で共演した、”先輩子役”から貴重なアドバイスも受けていた。

「神木隆之介さんに『声変わりをする時って、どうされてました?』ってお聞きしたら『声変わりは誰にでもあることだし、自然のものだから気にしなくていい、そのまんまでいいと思う』って言ってくださって…。その言葉をいただくまでは、やっぱり声が低くなったら困るのかなとか思ったりしたんですけど、避けては通れない道だなと思いましたし、声に関しては、また違った僕を見てもらえると捉えて、今は気にしなくなりました。声変わりも含めて、役の幅が広がっていけたらと思ってるので、どんどんいろいろな役をやりたいです!」

今回の映画の撮影中には、58歳差の舘に”オトナの手ほどき”も受けた。

「舘さんがコーヒーを入れて持ってきてくださったんです! すごく興味があって、それ以前に飲んだ時は苦かったのに、舘さんのコーヒーはおいしかったです!」

現在、中2。学校ではバスケットボール部で汗を流しながら、学業と仕事を両立している。

「学校でもバスケだったり、友達と遊んだりということもありますが、両立ってものすごく難しいと思っていて、どうしたらいいのかな? って思うこともあるんですけど、僕は仕事が好きで、それを学校の先生方にも理解していただいてるというのが一番ありがたいことです。もちろん学業もちゃんとやっていきます」

役者業とともに、実はもう1つの夢がある。

「獣医師になって、動物を保護できる施設を建てたいんです。もちろん、今のお仕事が大好きなので、これから先も続けさせていただけるのであれば、やらせていただきたいんですけど、資格だけでもとっておきたいので、勉強も頑張りたいです。飼っている犬の1匹が心臓疾患のある子で、それ以外の2匹が保護犬なんです。そうした動物を、なるべく減らしたいという思いがあります」

3歳から芸能活動を開始。物心ついた時から仕事をしている。役者という仕事が、今、一番楽しい。

「自分の得意な役ばかりやるのではなく、1つ1つの仕事に妥協をしない役者さんになりたいです! ”どうなりたい”じゃなくて、”この先こうしたい”というか。どんなお客さん、見てくださる方々に納得してもらえるようなことができる役者さんになれたらいいなと思います」

あふれ出る仕事への情熱は、大人顔負け。そこには「心くん」ではなく、「心さん」がいる。

「”かわいい!”って言われるのもうれしいですけど…(笑い)。もう14歳で、思春期に入りかけているので、”かっこいい!”って言ってもらえたら、よりうれしいなという思いはあります」

そうちゃめっ気たっぷりに笑う姿は、14歳そのものだ。

◆寺田心(てらだ・こころ)2008年(平20)6月10日、愛知県生まれ。3歳の頃から芸能活動を始め、13年、TBS系ドラマ「とんび」、14年に映画「トワイライトささらや」などで好演。15年、愛くるしい表情を見せた「TOTO」のCMでブレーク。ドラマはフジテレビ系「OUR HOUSE」、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」など。映画も19年「ばあばは、だいじょうぶ」で「ミラノ国際映画祭」外国語映画最優秀主演男優賞のほか、21年「妖怪大戦争 ガーディアンズ」で主演。今月2日にテレビ朝日「心がハタチになる頃には」(午後11時)で民放初MCを務める。