第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」の坂元裕二氏(56)が29日、授賞式から一夜明けて東京・羽田空港に帰国した是枝裕和監督(60)とともに会見を開いた。

坂元氏は「実感は正直、あまりありません。受賞を初めて聞いた時、寝ていたものですから夢かと思いました。まだ夢の中にいるようで…重みが作品の責任感。手にも背中にも乗った、大きな責任だと思っています」と語った。その上で「最近、映画の脚本を書き始めて、ほぼ2本目。監督、プロデュースのお力を借りながら、ゆっくり進んでいるものですから、今回含めて周りのお力によるものだと考えています」と感謝した。

「怪物」は、是枝監督が17年のTBS系ドラマ「カルテット」、21年の映画「花束みたいな恋をした」などで知られる、脚本家の坂元裕二氏(56)と初タッグを組み、日本映画としては3作ぶりに手がけた新作。大きな湖のある郊外の町で起きた、よくある子供同士のケンカに見えたものが、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち主張が食い違い、主次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちはこつぜん姿を消す物語。

シングルマザー麦野早織を安藤サクラ(37)沙織の息子・湊を黒川想矢(13)湊の友人の星川依里役を柊木陽太(11)担任教師の保利道敏を永山瑛太(40)が、それぞれ演じた。劇中には、黒川が演じた湊と柊木が演じた依里が、男の子同士でお互いを好きになっていく過程と、その心の動きが繊細かつ克明に描かれている。2人は演じるに当たり、性的シーンで俳優と製作側を取り持ち、ケアするインティマシーコーディネーターや、保健体育の先生の指導も受けている。

同映画祭の主要部門から独立した賞の1つ「クィア・パルム賞」を受賞した。日本

映画としては初の受賞となる。

クィア・パルム賞は10年に創設され、第63回のカンヌ映画祭から授与されている。LGBTQやクィアといった、性的マイノリティや既存の性のカテゴリに当てはまらない人々を扱った映画に与えられる独立賞の1つ。コンペティション部門、ある視点部門をはじめ、カンヌ映画祭と並行して開催されるフランス監督協会主催の監督週間、フランス映画批評家組合主催の批評家週間などの部門に出品された全ての作品が対象。公式部門とは別に独立した審査員が組織され、映画監督や俳優、ジャーナリストや大学教授、各国のクィア映画祭のプロデューサーなど、毎年5、6人が審査員となる。