長渕剛(66)が24日、神奈川のよこすか芸術劇場で「Tsuyoshi Nagabuchi Concert Tour 2023 OH!」をスタートさせた。

オープニングから、前に進むためにこぶしを挙げる新曲「OH!」や「明日に向かって」「ひまわり」など、観客が発散できるような曲が並んだ。長渕は「やっとコロナが緩和され、(コロナ禍にあった)これまでの3年。震災(東日本大震災)からは十数年。我々の心の中に集積した不安や疑念を全部、会場で引きちぎってしまえというツアーにしたい」と気合を入れる。

照明機器のムービングライトを、ホールコンサートでは過去最多となる100台近くを設置。鳥やイワシが群れをなして飛び、泳ぐような光の演出などで、まばゆいばかりのステージを作り上げた。「個の力が集まって群れをなす集合体には、必ず連帯がある。この時代に必要なのは群れの力」と語る。観客はその光の演出に、あらためて連帯、共生の大切さを痛感した。

今年も多忙である。ツアーの合間を縫って、8月24日から27日まで、故郷の鹿児島県霧島市で「長渕剛の自然塾」を開校する。小学4年生から6年生までの20人を募集して、夏の思い出を提供する。

11年8月に、東日本大震災の福島第1原発事故で避難生活を送る福島・浪江町の小学生20人を、鹿児島・霧島市でのサマーキャンプに招待した。約1週間の合宿で、子供たちは明るさを取り戻した。

以来、同所での自然塾の構想を持っていたが、コロナ禍などで止まっていた。自然塾の目的の1つに、コロナ禍や時代の変化で崩れた親と子、大人と若者の信頼関係の再構築があるという。長渕は「今年はテストケースの意味合いが大きいですが、地元の青年団の協力を得て準備は進んでいます」と手応えを口にした。来年以降もライフワークとして継続するつもりだ。

さらに「巡恋歌」でデビューした10月5日から、45周年イヤーに突入する。「今、さまざまな仕事のリーダーになってらっしゃる方に、長渕の歌を青春の糧として、あるいは人生の賛歌として歌って来ましたと言われるようになった。自分自身、幸せがなんであるか、よく分からなくなった時期もあったが、(そう言っていただけるためには)45年の修練が必要だったんだと感じます。これからも歌を生業としてきた使命感を、妥協を許さず、最後まで持ち続けて行きたい」と誓った。

ツアーは9月28日の大阪城ホールまで、この日を含め14会場で20公演が行われる。67歳の誕生日の9月7日と8日には、東京・日本武道館が待っている。

コロナ禍の感染予防でマスク着用、大声禁止など規制されて来たが、解放された会場には、こぶしを突き上げての長渕コールが響き渡った。いつもの、長渕剛が躍動した。【笹森文彦】

◆長渕剛(ながぶち・つよし)1956年(昭31)9月7日、鹿児島県生まれ。78年「巡恋歌」で本格デビュー。「順子」「乾杯」「とんぼ」などヒット曲多数。アルバムは「LICENSE」「昭和」「JEEP」など5作連続を含む12作品がチャート1位。04年に鹿児島・桜島で、15年には富士山麓でオールナイトライブを開催。俳優、画家、書道家としても活躍。