歌手で女優の伊藤蘭が19日に、2年ぶりのソロアルバム「LEVEL 9.9(レベル・ナイン・ポイント・ナイン)」を発売する。

キャンディーズとして1973年(昭48)にデビューして50周年の記念ツアーも、来月19日から全国6都市で行う。このほど、“歌手伊藤蘭”の今に迫った。【聞き手=小谷野俊哉】

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78年のキャンディーズ解散から41年の時を越えて、19年にソロデビュー。2年ぶりのアルバム発売だ。

「自分が歌いたいサウンドを多く取り入れました。シンプルに歌詞で思いが伝わるように…。ダンサブルなものからハードなロック調まで、いろんな曲があります。聞いた方が踊り出したくなる楽しいアルバムになりました」

自身も収録曲の「ファンク不肖の息子」の作詞を担当した。

「男子が主人公の歌で、結構ワイルドな歌詞。ちょっと親目線な感じも入ってますけれども、親の思う通りに子供は育たない、でも元気ならいいという気持ちを込めました」

来月19日の横浜から始まるツアーは「伊藤蘭 50周年記念ツアー~Started from Candies~」と題して、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡を回る。デビュー記念日翌日の9月2日には、東京国際フォーラムで「Celebration day!」と銘打ってキャンディーズの楽曲も多く歌う。

「アルバムの中からも歌いますけれども、50周年なので。キャンディーズとしてデビューしたからこそ、今も活動できている。大事にしたい存在ですし、皆さん、キャンディーズ多めだと喜んでくれるんです」と笑顔だ。

4年前にソロで41年ぶりに歌の世界に戻ってきた。

「解散して、芝居の道でやり始めてからは、歌のことに気が回らなかった。何度かお話はあったんですけど、子育てだったり、お芝居だったりで、気が付いたら時間が過ぎていました。また歌ってみないか? と言われて、最後のチャンスなのかなと思って前向きに決意をしました。やると決めたからには真摯(しんし)に向きあっています」

かつてのファンが、キャンディーズの曲を歌う伊藤の姿を喜んでいる。

「今までずっとファンの方がいてくれても、直接交流ができる場所がなかった。そういう意味では、キャンディーズという共通の思い出を持った者同士が、また久しぶりに集えて、いい時間を過ごせてることが、当たり前のよう見えて奇跡に近い。その機会をキャンディーズに与えてもらった感じです」

デビュー当日の9月1日に発売されるキャンディーズの5枚組CDボックス「The Platinum Collection~50th Anniversary~」は、キャンディーズのメンバーだった藤村美樹さんも企画から参加。11年に亡くなった田中好子さんへの思いも託しつつ、ラン・スー・ミキの歌声がよみがえる。

「5枚組でシングルのA面、B面、私が好きな曲、美樹さんが好きな曲、そしてスーさん(田中)が好きそうな曲を2人で選びました」

女優、そして歌手としてさらに歩みを進めていく。

「それぞれが別な感じで、私の中に存在している世界。ファンが“ランちゃん”って気軽に呼んでくれるのがいいですよね。ご夫婦で、中には親子でいらっしゃる方もいる。それがうれしいですよね」

“ランちゃん”は、今も現在進行形のアイドルだ。

◆伊藤蘭(いとう・らん)東京都生まれ。72年に田中好子、藤村美樹さんとキャンディーズ結成。73年9月1日、シングル「あなたに夢中」でデビュー。「年下の男の子」「春一番」「哀愁のシンフォニー」「やさしい悪魔」「微笑み返し」などがヒット。75年から3年連続NHK紅白歌合戦出場。78年の解散後、一時引退。80年に映画「ヒポクラテスたち」で女優復帰。19年にアルバム「My Bouquet(マイ・ブーケ)」で、解散以来41年ぶりにソロ歌手デビュー。157センチ。血液型O。