今年に入り、活躍が目覚ましい高齢の芸能人を取材する機会に恵まれている。映画デビュー60年を迎えた藤竜也は、御年82歳にして今年だけで「それいけ! ゲートボールさくら組」(野田孝則監督)と「高野豆腐店の春」(三原光尋監督)と2本の主演映画が公開され「高野豆腐店の春」公開時の8月にインタビューした。その後、9月30日(日本時間1日)にスペインで開催されたサンセバスチャン映画祭で、コンペティション部門に出品された「大いなる不在」(近浦啓監督、来年公開予定)での演技が評価され、最優秀俳優賞(シルバーシェル賞)を受賞した。同映画祭71年の歴史で、日本人俳優の同賞受賞は初めて。藤は、現地で行われた授賞式の檀上で「映画よ、ありがとう」と美しく、力強いスピーチで会場を沸かせた。

今月に入り、3日に自伝的代表作「窓ぎわのトットちゃん」の42年ぶりの続編「続 窓ぎわのトットちゃん」(講談社)を刊行した、黒柳徹子が都内で開いた発売記念会見を取材した。藤より年上の90歳で、会見場に入場した際は、やや前のめりによろめき「つんのめった」と言って取材陣を笑わせた。そして「書いているうちに、1年生の時は学校に行けば退学になるし、何かにつけ問題児だった私が変わっているかと思ったら、何も変わっていないんだな。考えたら、変わっていなくても一応、芸能界で70年ですか? 仕事ができたから、まぁ、いいかと自分を納得させた」と語るなど、元気そのものだった。

10日には、都内で行われたAmazon Originalの映画「次元大介」(橋本一監督、13日配信)ワールドプレミアに登壇した、草笛光子を取材した。90歳の誕生日を迎える22日より一足早く、主演の玉山鉄二(42)からサプライズで花束を贈られ「ありがとうございます。90歳…何が、めでたい? あっという間に90という数字が目に入ってきて。闘ったら損だから、受け入れて90歳を楽しみたい」と喜んだ。

3人に共通しているのは、それだけの年齢を重ねても、ごくごく自然で、当たり前のように現役であることだ。藤にインタビューの中で「仕事は、ある限りやるということですか?」と聞くと「そうですね。ただ、体頼み、というところも、ありますけどね…へへっ」と笑った。「今後、やりたい仕事、役どころはありますか?」と聞くと「それはないですね。今まで、それは思ったことはないですね。来た仕事、いただいた仕事をやっているだけで。こういう役をやりたいっていうようなことは、考えたことはないです」と答えた。

「体頼み」という肉体の鍛錬のため、公園での懸垂やウオーキングを欠かさず行っている。「パワーは…そうね、トレーニングしてますからね、公園で。(歩くのは)距離で言ったら10キロくらいですかね。まぁ、続けていればね、大丈夫でしょ」と、アッサリ口にした。特にシニア層に向けて、とメッセージを依頼すると「いやぁ、メッセージなんて…。僕は、ただの俳優ですからね。本当に、偉そうなことは嫌ですね。何ですかねぇ」と照れ笑いを浮かべた。

黒柳は会見の中で、新たに挑戦したいことを聞かれると「インスタグラム、YouTubeもやっているんです。新しいことができた時に周りにやっている人がいて、こうやるんですと教えてくれる」と口にした。そして「テレビは映したら映しっぱなしになっちゃうんですけども…例えば、ご飯を食べてるのをお見せすると『大食いですね』と戻ってくるのが面白い。楽しい毎日を過ごしています」と笑みを浮かべた。

草笛は「次元大介」で表向きは寂れた時計店を営む“世界一のガンスミス(銃職人)”矢口千春を演じた。玉山演じる主人公の次元大介が長年、連れ添った愛銃コンバット・マグナムに不調を感じて、数年ぶりに日本を訪れて再会する、という役どころだ。銃職人だけに細かな作業の芝居も多かったというが「でも私、目が悪くなかったのでスイスイ行きました。出来ましたね?」と玉山に問いかけた。「もう、驚くほどスイスイいって」と太鼓判を押されると「じゃ、これから、やろうかな」と胸を張った。

藤も、草笛も、黒柳も、人生の大先輩ながら、さらなる人生の先、可能性を見ている。そんな3人を取材し、疲れたなんて言っていられないと自らのネジを締め直しつつ、東京駅前のベンチで、この原稿を書き終えたい。【村上幸将】