“記者目線”から“ファン目線”に一瞬で変わった。「第36回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)で主演男優賞を受賞した鈴木亮平(40)にインタビューした。「さては、エゴイストの方が好きだな?」といじってくれた鈴木の優しさに触れ、数十分のインタビューで大ファンになってしまった。

鈴木は主演映画「エゴイスト」(松永大司監督)「劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~」(松木彩監督)で受賞した。「エゴイスト」ではゲイの青年、「MER-」ではヒーローのような熱い医師を演じた。対極な作品で「違った顔」を見せる鈴木のインタビューを前に、2作品を再度見直した。

個人的に「エゴイスト」は、鈴木の手先と首の角度が地で演じているような自然さを、より漂わせていたと思う。質問したいことが山ほどあった。というのも、記者は大学時代、留学先でLGBTの知り合いが何人も出来た。卒論の研究も戦時中の性的搾取から世界大戦後のLGBTの歴史を取り上げ、英・帝国戦争博物館に足しげく通っていた。米・オクラホマへの留学経験がある鈴木は、性的マイノリティーへの理解が深まらない日本でこの作品に出演する使命をどう捉えているのか、知りたかった。もっと言えば、日本で「エゴイスト」がどう広がっていくことを望んでいるのか気になっていた。

鈴木は「良い質問ですね」と笑顔を見せた後「性的マイノリティーに関する差別はすごかった。差別用語が飛び交い、性を開示できる雰囲気で無かったですし、今もそうかもしれない」と言葉を選びながら話してくれた。

「日本も日本にあった形で、あらゆるマイノリティーの当事者が見た時に自分たちのストーリーだと思えるような話を増やしていけたらと思います。その意味で、ゲイムービーとして成り立たせることが、僕たちの使命の1つと感じていました」と教えてくれた。

その後、「TOKYO MER-」の話題に移した途端、完全に目の前にいる鈴木が「喜多見チーフ」に見えてしまい、ざっくりした質問をしてしまった。

記者は21年当時、TBS系で高視聴率を記録した日曜劇場「TOKYO MER」にハマりすぎていた。どのくらいかというと、次の日曜日が来るまで、録画した前週の放送しかテレビで流さないレベル。1週間で同じ放送回を30回ほど再生していた。鈴木が演じる喜多見チーフの口癖「ですね」もよく言っていた覚えがある。

まるで、映画のティーチインイベントだった。しかし、「さては、エゴイストの方が好きだな?」「MER本当に好き?」とイジり、周囲を爆笑させてくれた。その後、施術シーンの工夫や現場での医師の方とのやりとりや雰囲気について詳しく説明してくれた。そして「よく見てますね」と一言。鈴木の優しさで救われた…と思った。

映画賞の取材後、TBS日曜劇場「下剋上球児」を楽しみにしながら、鈴木の他の作品も改めて見直した。「孤狼の血LEVEL2」はあまりの怖さに何度か目を覆ったが、「西郷どん」「天皇の料理番」「テセウスの船」「燃えよ剣」など、改めて演じ分ける振り幅の大きさを実感した。同時に、同じ俳優とは思えないストイックさと、インタビュー時の優しさを思い出しては元気づけられている。

「変化の時期」という40代を経て、次はどんな鈴木の演技が見られるのかワクワクしながら、その時また取材できるように…と切に願っている。【加藤理沙】