昨年12月30日に73歳で亡くなった歌手八代亜紀さんのヒット曲「舟唄」「雨の慕情」などを作曲した浜圭介さん(77)が10日、日刊スポーツの電話取材に応じた。
訃報を知った際の心境を「ウソでしょと思った」と語り、八代さんとの出会いを「宝物」と表現した。
八代さんの訃報は妻の元歌手奥村チヨさん(76)から伝えられた。「昨日は調子が悪くて薬を飲んでずっと寝ていたんですよ。夜になって女房が『浜ちゃん、八代さんが亡くなった』と教えてくれたんです。もう、本当にびっくりしました」。そして「うそでしょ、という思いを通り越してガックリときました。黙とうをして、ありがとうって思いながら手を合わせました。本当に悲しくて寂しいことです」。
「舟唄」は79年に発売し、同年のレコード大賞金賞に輝き、NHK紅白歌合戦で初の大トリの大役を務めた。この曲が「演歌の女王」として八代さんの人気を不動のものにした。浜さんが八代さんに注目したのは、その数年前だった。
「ちあきなおみさんの『恋慕夜曲』っていう僕の作品を八代さんがアルバムの中にカバーで入れてくれたんです。それまでの彼女の演歌っぽい、コブシを利かせた歌はもちろん知っていますよ。でも『恋慕夜曲』を歌ってくれたことが『舟唄』を作る際、ものすごくヒントになった」と明かす。「舟唄」は当初、美空ひばりさんをイメージして作ったが、八代さんが歌唱することになった経緯がある。「「恋慕夜曲」は16音符の曲で、同じ16音符の『舟唄』を八代さんが歌ったときにピッタリはまったんですね。そして彼女の歌を聞いた時に、感性の深さっていうか、阿久悠さんの詞の世界に入り込んでいく歌唱っていうのはやはりただ者ではない。10年に1人か20年に1人っていうアーティストだと思いました」。
翌80年発売の「雨の慕情」はレコード大賞の大賞を獲得した。これも「作詞阿久悠&作曲浜圭介」のコンビだった。「今回は八代さんのためにかき下ろすわけです。彼女のいいところ、世界観を頭に入れて書いたメロディー。『恋慕夜曲』のカバーが八代さんにピッタリだったから、『雨の慕情』にも16音符が出てくるわけです」と明かした。
曲作りの際はアドバイスも送った。「こちらも作家ですから、彼女のいいところを出して上げたい。『こうしたらいいんじゃないか』『ここはもうちょっとビブラートをやめた方がいいんじゃないか』などと言うと素直に聞いてくれました。言ったことをちゃんと歌として表現してくれる。これはすごいことで、なかなかできないんです」。
浜さんの曲の世界観を理解し、歌でそれを表現をして多くの人に届けた八代さん。「これは私にとっては宝ですよね。そういう意味では、彼女のやってきた功績に感謝して、私自身もいいものを作っていこうという歩みになりました」と、共に時代を彩った八代さんの死をいたんだ。



