能登半島地震で、芸能関係者が現地で被災者を激励する動きが相次いでいる。2月末には舘ひろし(73)や、杉良太郎(79)と伍代夏子(62)夫妻が炊き出しを行った。交通網の寸断や断水などで、すぐには現地入りできなかった。今後、こうした活動が多くなりそうだ。

過去、震災が起きると、被災者を激励する「歌の力」が注目されて来た。

岡本真夜のデビュー曲「TOMORROW」は、95年5月10日に発表された。同年1月17日に、阪神・淡路大震災が起きていた。

<歌詞>涙の数だけ強くなれるよ…明日は来るよ どんな時も…

看護師になった親友を激励するために作った同曲は、人々に勇気を与える曲として大ヒット。11年3月11日の東日本大震災でも、多くの被災者を元気づけた。岡本は当時「どんなつらい状況でも、前向きな気持ちを持つことで、明日へつながると信じています」と話した。

松任谷由実の「春よ、来い」は、94年から95年に放送されたNHK連続テレビ小説「春よ、来い」の主題歌だった。放送期間中に阪神・淡路大震災が発生した。当時、多くの被災者が、避難所で同ドラマを見て同曲を聴き、心を癒やされ、勇気を与えられた。

東日本大震災が起きた11年の第62回NHK紅白歌合戦で、松任谷は同曲を歌唱した。春の訪れを願う同曲は、復興を願う被災者、そして日本中の思いと重なった。

千昌夫の「北国の春」は、東日本大震災の復興への象徴のような歌になった。岩手・陸前高田市生まれの千の実家も被災。実母は押し寄せる津波から、かろうじて逃れた。

知り合いを数多く亡くした千は「歌など歌っている場合じゃない」と思った。だが、東北各地の被災者の誰もが「歌って」と懇願した。千は「北国の春」を、悲しくても歌い続けることを誓った。11年末の第62回NHK紅白歌合戦に22年ぶりに出場して、心を込めて同曲を歌った。

能登半島地震で、厳冬の中、数多くの人が避難生活を余儀なくされている。仕事や受験のために、別の町に移った人も数多くいる。作詞した、いではく氏は「復興のために、この曲がまた心の支えになってくれれば」と願った。

<歌詞>あの故郷へ 帰ろかな 帰ろかな

春は、明日は必ずやって来る。

    【笹森文彦】