昨年12月30日に73歳で亡くなった歌手八代亜紀(やしろ・あき)さんのお別れ会「八代亜紀お別れの会 ~ありがとう…これからも~」が、26日、東京・片柳アリーナで執り行われた。ステージ復帰を熱望していた八代さんの思いをくみ、AIの音声合成技術によるナレーションと過去のライブ音声などを使い、コンサート形式で開催された。

開演直後、「皆さん、お元気でしたか…八代亜紀です。今日は、私のためにわざわざお出かけくださって、本当にありがとうございます」と八代さんの声が会場に流れた。「昨年暮れ、残念でしたが、長い歌手人生に終止符を打ちました。苦しい時も楽しい時も、心の支えになったのは、皆さんからの声援でした。感謝の気持ちでいっぱいです」と伝え、「今日は『ありがとう…そしてこれからも』そんな思いを込めた集いになればと願っています。どうぞ、思い出話などしながらなごやかなひと時をお過ごしください」とあいさつした。

関係者によると、自身の音声を残したいとの八代さんの希望で、20年に品質のいい「声辞書」を作成するために必要な音声を録音。八代さんらしい自然な合成音声を実現し、「AI語り」としてお別れの会のナレーションなどに使用したという。参列した里見浩太朗(87)は「本当に亜紀ちゃんが出てくるんじゃないか、という思いでした」と驚いていた。

生バンドの演奏や過去の音源などを組み合わせ、「舟唄」「雨の慕情」などが次々と流された。曲の合間には過去のライブでのトークや「AI語り」のナレーション、映像などが流された。

会場の片柳アリーナは、日本工学院専門学校が保有する多目的施設。八代さんが生前、同校の学生たちとともにコンサート開催を検討していた場所で、音楽業界を志す同校の有志の学生たちも制作・運営に参加した。関係者の部には1000人、一般の部には2000人、合計3000人が参列する予定。

祭壇にはコチョウラン、バラ、カーネーションなどの大量の花が供えられた献花台があり、大型ビジョンには18年に撮影されたピンクのドレス姿の遺影が映し出された。戒名は艶唱院釋信譽明煌清大姉(えんしょういんしゃくしんよみょうこうせいだいし)。グッズの収益の一部は、八代さんの遺志を継承し、能登半島地震をはじめとする震災の被災地・動物保護団体・児童養護施設へ寄付される。

八代さんは急速進行性間質性肺炎のため73歳で死去。昨年9月に膠原(こうげん)病と診断を受け、治療に専念するために活動を休止。そのままステージ復帰はならなかった。葬儀は関係者で執り行われた。