昨年末に「週刊文春」に性行為強要疑惑を報じられ、ダウンタウン松本人志(60)が同誌を発行する文芸春秋ほか1人を被告として起こした、約5・5億円の損害賠償請求等訴訟の第1回口頭弁論が28日に東京地裁で行われる。

両者の主張は真っ向から対立しており、裁判は最長2~3年ほどかかるとされる。元衆院議員で元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士(67)に今後の流れや、ポイントを聞いた。

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昨年末の初報以降、世間の強い関心を集めてきた松本の性行為強要騒動の裁判が始まる。若狭弁護士によると、第1回口頭弁論では両弁護人による訴状陳述や被告側の答弁書提出などが行われるといい「原告の訴えのそれぞれの要素についての認否確認などが行われる可能性はありますし、どこまでなされるかは見てみないとわからない。いずれにせよ、松本さん出廷の可能性は低い」と語る。

その後、当面は書面でのやりとりが続くといい、裁判所からの和解勧告などに応じない場合は証拠について検証する尋問などが始まる。若狭弁護士は尋問に至るまで約半年~1年を要すると見立て「そこで松本さんが姿を見せる可能性があります。両者が和解勧告に応じればもっと早く裁判は終わりますが、おそらく文芸春秋側が応じないでしょうし、尋問まで進む可能性の方が高いと思います」。

松本は1月9日に自身のXを更新以来、無言を貫いていたが、3月25日に代理人弁護士を通じてコメントを発表。「自分の主張はかき消され受け入れられない不条理に、ただただ困惑し、悔しく悲しいです。世間に真実が伝わり、1日も早く、お笑いがしたい」などとつづった。若狭弁護士は口頭弁論の3日前でのコメント発表について「弁護士事務所を通じて出している点がミソです。しっかりとチェックを受けて、内容もすり合わせて出している。『松本さんは真相を解明して早く現場に戻りたいのですよ』と世間の雰囲気や、第1回公判後のメディアの報道姿勢などにくぎを刺した。普通の人がコメントを出してもあまり意味はないですが、これだけ著名な方なので影響力はある。これは弁護側の戦術でしょう」とした。

「週刊文春」は昨年末から今年3月にかけて断続的に松本に関する報道を続けてきた。しかし、今回の裁判は昨年末の初報にむけてのみ。損害賠償額は5・5億円と相場からはかけ離れた請求になっている。若狭弁護士は「金額は、報道がいかに間違っていて、どれだけ傷ついたのかを表すインパクトにはなる。5・5億という金額でそれを表したのでしょう。仮に松本さん側が勝った場合の実際の支払額は今回の場合は1000万円以上はいくと思いますが、その程度だと思います」。

若狭弁護士の見立てでは、現状では文芸春秋側に分があるとみている。「松本さん側では本人以外だとスピードワゴンの小沢さんらが証人として立てる可能性がありますが、ある意味仲間ですので、信用性は高くない。初報以外の記事についてさらに訴訟を起こすともっと時間がかかってしまいますし、今回の裁判だけでも1審で終わっても2年以内。控訴すれば3年近くかかる。今は落としどころを考えているところなのだと思います。報道内容は事実ではなかったけど、『週刊文春』側が取材を重ねた結果、それを真実と思って報じた“真実相当性”があったとして「文春」側が勝訴になったとします。松本さん側としては、訴えるだけ訴えて、真っ黒で負けたわけではなく灰色で負けた。それはそれで良しと考えている可能性が高いのではないでしょうか」。