宝塚歌劇団の25歳宙組団員が昨年9月に急死した問題で、親会社阪急阪神ホールディングス(HD)は28日、上級生らによる団員へのハラスメントを認め、遺族側と合意書を締結し謝罪したと発表した。

角和夫HD会長らが同日、遺族に謝罪し、宙組上級生複数も謝罪文を遺族に提出した。遺族側が主張したハラスメントをほぼ認めた形。遺族代理人の川人博弁護士も同日、都内で会見し「明確にパワハラを認め、遺族に謝罪した意義は大きい」と評価した。

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遺族側の要望をほぼ受け入れての和解成立だった。阪急阪神HDの嶋田泰夫代表取締役社長、大塚順一執行役員や、劇団の村上浩爾理事長が登壇した会見。嶋田社長は「重大な結果」に「痛切に反省」とし、当初は否定していたハラスメント行為を精査するうち「気づきがあった」と変心を説明した。

「たとえば厳しい叱責(しっせき)に悪意はなかったとしても、ハラスメントにあたる。その気づきが、劇団員にはなく、また、我々が教えてもいなかった。我々が、劇団員にその認識を持たせることができていなかった」

嶋田社長らは役員報酬を自主返納した。

今年110年の伝統を誇る劇団は、上級生から下級生へと伝統の継承で紡いできた。厳しい指導でも知られたが「時代の流れに対応していなかった」とも振り返り、上級生による「ハラスメント行為」は、劇団の責任と明言。「怠慢というそしりを受けても、甘んじて受け入れざるを得ない」と、経緯を語った。

大筋認めた遺族側の主張には、団員が上級生からヘアアイロンでやけどを負わされたことにも触れ、上級生が強要したと認めた。ただし、劇団側は、やけどは「故意ではない」とした。

新人公演をめぐる過重労働、必要ではない上級生からの指示遂行の強要なども含めて遺族側の主張に寄り添い、新人公演などのダメ出しでは「人格否定のような言葉を浴びせた」こと、団員の組替え要求もあったが、放置したと認めた。

宙組幹部が団員を呼び出し過呼吸症状を起こした指摘にも同意し、団員が亡くなる数日前になる23年9月下旬、下級生の衣装取り扱いをめぐるトラブルでも叱責(しっせき)があった。

「叱責に悪意はない」「やけどは故意ではない」。この2点以外はほぼ遺族側の要求を受け入れ、この日午前、角和夫HD会長らが遺族に直接謝罪。上級生の相当数が謝罪文を遺族に提出し、和解合意へ至り、団員は、この日付で劇団公式ホームページのスタープロフィールから外れた。嶋田社長は「ご遺族の心情を思うと、取り返しのつかないことをした。申し開きできない」と、20秒以上、何度も頭を下げた。

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