山田裕貴(35)が、19日に都内で新著「怪人」(東京ニュース通信社)発売記念記者会見を開いた。8月6日に都内で行われた主演映画「ベートーヴェン捏造」(関和亮監督)製作報告会見以来、2カ月ぶりに直接、質問を投げかけて言葉を交わしたが、山田は一片のブレもなく、変わらず、熱かった。
山田は時に、自身の発言を真っすぐに伝えて欲しいと取材陣に求める。例えば、7月25日に都内で行われた、堤真一(61)とのダブル主演映画「木の上の軍隊」(平一紘監督)公開記念舞台あいさつの壇上で涙した直後に「悲しい映画だと書かないで下さい!」と呼びかけた。その裏には、太平洋戦争末期に熾烈(しれつ)な地上戦が繰り広げられた沖縄で、終戦を知らずに2年間、ガジュマルの木の上で生き抜いた日本兵2人の実話を基に、ダブル主演の堤真一(61)とともに実在した兵士をモデルにした役を演じた。それだけに、自ら「前向きな映画だと言っていたのに…」泣いてしまったことを軸に報じられる、映画の本質が伝わらなくなることだけは避けたいという、強い思いからの取材陣への要望だった。
「怪人」の発売記念記者会見の質疑応答で、俳優業のあり方、気持ちに変化があったか? と問われると「僕の心意気と心は変わっていない」と即答した。続けて「周りの方の対応が変わってきちゃった。こんな距離、あったっけ…寂しさを感じる。僕はフランクにしゃべりたいのにな。でも毎現場、楽しい」と、自らがステップアップしていく中で、周囲の反応が変わってきているとも語った。
その流れで「木の上の軍隊」「ベートーヴェン捏造」、31日に公開を控える「爆弾」(永井聡監督)と今年だけで3本公開される主演映画の撮影を「5カ月の間、3本やった」と、わずか5カ月の間に行ったと明かした。さらに、26年春にTBSでスペシャルドラマとして地上波放送、U-NEXTでドラマシリーズを独占配信する「ちるらん 新撰組鎮魂歌」に主演するが、そのアクション練習を映画3本の撮影後「クランクアップした次の日から10日間、ぶっ続けでやって。そのままインとか、とんでもない」と、過酷なスケジュールを明かした。
その上で、取材陣に「ネガティブに書かないで欲しいんですけど」と呼びかけた上で、撮影が連続する日々の中で、俳優として、表現者として葛藤を抱えていると吐露した。
「クオリティーを上げたい。準備できているのか、果たして良い俳優なのかと自分に問うてしまう日々が続いている。何とかやってきたけど。ハイレベルのものを目指す上でで自分の中に落とし込む、勉強する、精度を上げる時間が圧倒的に足りていないんじゃないか。その中で『山田君、すごい、すごい』と言われても、もうちょっとできたかもしれないな、と思っている自分がいるのが、ものすごく嫌」
質問者が「今、一番したいことは?」と、さらに尋ねると「2つあります」と再び即答した。
「ぜいたくは言わないから、勉強する時間が欲しいです。ぜいたくを言うのであれば、ちゃんとした休暇…それを考えなくて良い時間」と答えた。その上で「休みたいということじゃなくて、自分の心のキャパを増やすためにも、1回リセットして、いろいろな準備をしたい。準備する前の休暇と、熱量を高めるためにもそういう時間が欲しい」
その上で「文句を言っているわけじゃないんです」と、取材陣に対し、重ねて自身の真意を伝えた。「エキストラから、この仕事をやっていて、セリフがあるだけで、主演作をやれるだけで、とにかく、マジでありがたいんです」と、ハードすぎる現状に、感謝しかないことを強調。「自分と戦わなきゃなと思う。でも、ありがたいだけじゃ、もう、やっていけないところにまで、もしかしたらきたのかも知れない。バランスを取らないと。今の全力は出し切っているんで…納得できないということじゃなく」と、俳優として、さらに前に進むためにも時間が必要だと訴えた。
7月11日に「木の上の軍隊」を軸にインタビューした当日、山田はNHK「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)に午前9時まで生出演した足で、取材場所として設けられたスタジオに入った。関係者からは、次の作品の撮影に入っており、その合間を縫って取材に応じていることも聞いていた。相当、多忙な中、取材を受けてくれたことに感謝し、真正面からこちらの思いをぶつけ約40分、語り合った。3日後の同14日に放送されたニッポン放送「山田裕貴のオールナイトニッポン」(月曜深夜1時)の番組内で、山田は25分にもわたり記者の取材を受けた感想、思いを熱く語った。その上で「真ん中に立たせてもらうと作品を知ってもらわないといけない。この身が朽ちて消え去ってでも、という思いで取材を受ける」と口にした。取材を受けるということを、本当に大事に思ってくれているんだと感じ、感謝の念は増した。
山田は「怪人」発売記念記者会見の中で「俳優は、がわで見ることで語られる。ここで語ったことも、どう伝わっていくか分からない」とも口にした。7月14日放送の「山田裕貴のオールナイトニッポン」の番組内でも、同7日に都内の日本外国特派員協会で行われた「木の上の軍隊」の会見について触れ「あの会見を全部、見てくれたら、僕の本当の思いは分かりますよ。世の中に、全部が伝わるはずはありません」と、公の場で自らが口にした発言の、一部がピックアップされて報道されることを想定していると語っている。
そうしたことを分かっているからこそ、自身の発言の中で、どうしても趣旨を間違って捉えられたくないものについては、真意がどこにあるかを集まった取材陣に対して訴え、正確に伝えて欲しいと要望しているのだと受け止めている。要望する中で「ごめんなさい。皆さんのお仕事を奪うようなことをして申し訳ないすけど」とまで口にして、集まった取材陣を気遣う。記者は、そうした山田の言動の1つ1つから「皆さんは、しっかりと話し、伝えれば、僕の思いを真っすぐに伝えてくれますよね」と、思いを託されているのだと感じている。
芸能メディアには、これまで、さまざまなことを報じられ、ふに落ちない報道も少なからずあっただろう。それでも、会見なりで真っすぐに向き合えば、きっと通じる…山田は、そう信じてくれているのだと受け止めている。だからこそ、ウェブは正確を期して発言を詳細まで書くように努め、紙面の原稿も紙幅が許す限り、山田の発言の真意をピックアップして書くようにしてきた。
この日、山田は冒頭の写真撮影の段階で目線を振って欲しいと呼びかけるなり、記者に対し「いつも、ありがとうございます」と謝辞を口にした。質疑応答は時間もなく、取材陣からの質問は2つにとどまったが、記者は「多忙な中、恐縮ですが、そうした経験を経て、じっくり準備する時間を取った上で、挑みたいことは?」と問いかけた。山田は「だけど…結果、やっていると思います。どんなに時間があろうがなかろうが、僕は全力でやっていると思います。そういう俳優なんだと思います」と口元に笑みを浮かべつつも、胸を張った。そして、帰り際に、集まった「ありがとうございました。すみません。ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました」と、何度も頭を下げてから降壇した。
1つ、1つの取材において取材陣に誠実に対応し、自分の言いたいことの真意は、こうなんだと、丁寧過ぎるくらい説明してくれる。そうした山田の思いを裏切りたくないという思いで、こちらも原稿を書く。そうして、1つのイベント、インタビュー、取材機会を重ねていくごとに、お互いの間に血の通った関係性、信頼関係が醸成されていく。令和の世の中ながら、昭和的な情だったり、温かいものを感じるからこそ俳優・山田裕貴を見つめ続けたいし、追いかけ続けたいし、投げかけて返ってきた声を書き続けたいと、心の底から思っている。【村上幸将】



