歌舞伎俳優市川海老蔵(33)が暴行を受け重傷を負った事件で、傷害罪に問われた解体業の伊藤リオン被告(27)が21日、昨年12月10日に逮捕されて以来73日ぶりに保釈された。東京・小菅の東京拘置所から出てきた伊藤被告は黒のダウンジャケットに両手を入れたまま報道陣の前に姿を見せ、ふてぶてしげな様子で車に乗り込んだ。3月3日の第2回公判では伊藤被告への被告人質問が行われる。

 午後6時55分ごろ、伊藤被告はグレーのスエットに黒のダウンジャケット姿で拘置所から出てきた。両手をダウンのポケットに入れたまま肩を揺すりながら、約100人の報道陣の前に姿を現した。無数のフラッシュがたかれる中、伊藤被告は終始ふてぶてしい様子で迎えの車に乗り込んだ。ただ、逮捕時と比べると、いくらかほっそりとしたようにも見えた。その際、プレミアムバナナと書かれた段ボール箱8個も運び込まれた。

 伊藤被告の乗った車は午後8時すぎ、都内の自宅近くに到着した。しかし、自宅前には多数の報道陣が待ち構えていたこともあり、伊藤被告は降りることなく、再び車は発車した。

 この日、東京地裁(板野俊哉裁判官)が保釈を認める決定をし、保釈保証金250万円が現金で納められた。伊藤被告側は昨年12月28日の起訴直後に保釈請求したが、地裁が却下。翌1月6日に却下した決定を不服として準抗告したが、それも棄却された。今月18日の初公判の閉廷後、弁護人が2度目の保釈請求をしていた。

 伊藤被告は18日の初公判で、昨年11月25日、東京・西麻布の雑居ビル内の飲食店で海老蔵の顔を拳で殴り、腹や腰、背中を蹴るなど暴行し約2カ月のけがを負わせたという起訴内容を「(間違い)ないです」と認めた。その上で、犯行は酒に酔った海老蔵からの暴行に対する防衛行為だったと主張し「海老蔵さんが先に暴行した。行き過ぎたが、やむを得なかった」と情状酌量を求めていた。

 また、初公判には妻や母も情状証人として出廷。妻は暴行の理由について「理由がないことでは怒らない」とかばい「一緒にいる人しか分からないかもしれませんが、家族思いで優しい」と話した。伊藤被告には1年3カ月になる双子の子供がおり、弁護人によると、伊藤被告は接見の際に「早く子供に会いたい」などと話していたという。

 2度目の請求で保釈が認められた背景には、妻や母の情状を求める証言が影響したと思われる。初公判で海老蔵側に非があったことが明らかになっており、3月中旬に予定される判決公判では伊藤被告に執行猶予が付く可能性が高まった。