令和初の国政選挙、第25回参院選は4日、公示される。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏(60)が、直前の最新情勢を分析した。
12年12月の発足から6年半続く安倍政権への、事実上の審判。与党が甘めに目標設定した改選議席の過半数(63議席)はクリアしているが「老後2000万円」問題などの影響で、32の「1人区」では与党に逆風との分析だ。鈴木氏は「れいわ新選組」の動向にも注目する。情勢は変わる可能性があるが、投票率も結果を左右することになる。
<鈴木哲夫氏の目>
自民党が2週間おきに行ってきたとされる参院選の世論調査が動いたのが、6月22~24日調査分。金融庁の「老後に2000万円貯蓄が必要」との報告書問題が出て初めての調査だったが、明らかに自民党へ逆風傾向が出てきたという。
ポイントは1人区。一騎打ちだけに風の影響を受けやすい。特に東北地区は、これまでの調査では自民党優位だったが、一気に接戦、または逆転。「2000万円問題はど真ん中の高齢者に響いている」(東北地区の自民党候補)「東北は、秋田の地上イージスデータ問題、日米貿易交渉でトランプ米大統領が選挙後に合意と語った農産物問題で農業票の批判も重なっている」(自民党選対幹部)。こうしたことから、32ある与野党対決の1人区について、自民党幹部自ら「このままだと最大で13、最小でも8議席落とす可能性」を語る。野党の1人区での共闘態勢にかかっているが、風向きが変わったこの勝機をつかむための野党同士のしがらみなどを、捨てることができるか。
勝敗ラインについては、与党過半数以外にもう1つのラインがある。憲法改正発議に必要な改憲勢力3分の2で、86議席が必要だ。野党がこれを阻止できれば、今後の安倍政権の求心力低下につながるだろう。
また、注目点は自民党や野党共闘の外側にもある。それは、維新と「れいわ新選組」の得票だ。統一地方選の大阪ダブル選以降、勢いを増す維新が議席を増やせば、安倍政権が接近し政権運営の構図の変化をもたらすことになるだろう。また「れいわ」は野党再編がうまく進まない中、今後の政治に大きなインパクトを与える。
2000万円問題に端を発した年金や社会保障、成果を思うように出せていない安倍外交、データ問題など政府のガバナンス…。争点は多い。
投票所に積極的に足を運んで1票を投じるか、そのまま政治不信で棄権するか。投票率が下がると与党が相対的に浮上する。劇的な結果は、投票率にかかっている。(政治ジャーナリスト)
◆鈴木哲夫(すずき・てつお)58年、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを歴任。豊富な政治家人脈で永田町の舞台裏を描き、TBS系「ゴゴスマ」など多くのテレビ、ラジオでコメンテーターを務める。近著に「石破茂の『頭の中』」(ブックマン社)などがある。