菅義偉官房長官が2日、安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選(8日告示、14日投開票)への立候補を正式表明した。午後5時から衆院議員会館内で行われた会見で安倍政権を7年8カ月支えた菅氏はコロナ対策など安倍政権の政策継承を掲げた。岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長との三つどもえの戦いは党内7派閥のうちの5派閥が菅氏支持を表明、圧勝の様相となっている。

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無派閥を貫き、コロナ禍の総裁選に立った菅氏は勝負ネクタイで出馬宣言に臨んだ。昨年4月1日、新元号を掲げ、「令和おじさん」として全国区の知名度を獲得した。あの時と同じ柄のネクタイで総理総裁への決意を伝えた。

「内閣官房長官として安倍政権を7年8カ月支えてきた。今、政治家として何ができるのか。熟慮に熟慮を重ねた」と出馬理由を語った。安倍政権の政策を継承し、基本政策の筆頭は「私に求められているのはコロナ対策を最優先としてやること」と述べた。

政治家としての原点を振り返った。「雪深い秋田の農家の長男として生まれたが、高校卒業後に農家を継ぐことに抵抗をおぼえて上京した」。だが「町工場に就職したが、厳しい現実に直面した」と、その後に非正規として働いた不遇の時代を述懐した。法大夜間部を卒業し、卒業後に一般企業勤務を経て、政治家秘書となり、38歳で横浜市議選に当選、47歳で遅咲きの国会議員となった。地盤(支持者、組織票)、看板(知名度)、かばん(資金力)に恵まれない無派閥議員として衆院議員を8期、総務相などを歴任した。

菅氏を推す無派閥グループの坂井学元総務副大臣は「菅先生も我々と同じ無派閥で非世襲。無派閥から初の総理を」と切望し、グループの若手議員は「庶民派ではなく、まさしく庶民の立場で議員を続けられている」とした。菅氏は「私を支えてくれるのは当選4回未満の国会議員。そのエネルギーが私を支えてくれている」と無派閥グループのエールに応えるつもりだ。

党内の大きな風は菅氏に吹いている。菅氏を後押しする無派閥グループ30人前後に加え、安倍氏が属する最大派閥の細田派(98人)、二階俊博幹事長率いる二階派(47人)、麻生太郎財務相率いる麻生派(54人)、石原派(11人)が菅氏支持を固めた。この日、竹下派(54人)も支持を表明して党内7派閥中、5派閥が結束した。国会議員394票の過半数を上回る280票以上が「菅推し」となった。対抗馬の岸田氏、石破氏との三つどもえの総裁選は「菅総理」誕生へと動いている。   【大上悟】

 

◆菅義偉(すが・よしひで)1948年(昭23)12月6日、秋田県生まれ。法政大卒。96年に衆議院選挙に初当選し、当選8回。06年、第1次安倍内閣で総務大臣として初入閣。12年9月、幹事長代行。12年12月、第2次安倍内閣で内閣官房長官。16年7月、内閣官房長官の在職期間が1290日となり、歴代1位となった。沖縄基地負担軽減担当大臣、拉致問題担当大臣も兼務。家族は妻と3男。好きな食べ物は甘いもの、麺類。お酒は下戸。血液型O型。