将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が広瀬章人八段(35)の挑戦を受ける、第35期竜王戦7番勝負第4局が8、9の両日、京都・福知山城天守閣で行われ、先手の藤井が95手で広瀬を破り、シリーズ対戦成績を3勝1敗とし、初防衛にあと1勝に迫った。終局時間の午後3時21分は藤井の2日制7番勝負の歴代最速となるスピード決着となった。第5局は25、26日に福岡県福津市「宮地嶽神社貴賓室」で行われる。
◇ ◇ ◇
戦国武将・明智光秀が築城した「光秀の城」。対局場となった天守閣からは福知山市街が一望できる。1日目の午前だった。静寂の中、藤井が55手目に「新手」を放った。広瀬が趣向をこらした前例の少ない攻撃重視の戦法に対し、藤井は「前例を離れ、一手一手が難しい将棋だった」と振り返った。
初手に立ち会った日本将棋連盟常務理事の井上慶太九段(58)は「前例を踏襲せず、変えるのは勇気がいる。研究は少しあったかもしれないが、対局に集中する中で、これが最善と決断された一手だと思う」。「現場対応力」の高さとともに、新しい将棋を自らの力で開拓する姿勢に感嘆した。
難解な中盤戦を経て、緻密な読みで完全にペースを握り、終盤戦ではリードを拡大。正確な指し回しで午後3時21分に投了に追い込んだ。藤井の2日制の7番勝負では最も速いスピード決着。持ち時間を2時間残しての完勝劇だった。
地元で行われた大盤解説会に登場した藤井は「(広瀬の)6三金型は公式戦ではあまり指されていない形だったので、前例を思い出しながら指していた」と深い事前研究がなかったと明かした。
シリーズ初戦は落としたが、これで3連勝。今年は、永瀬拓矢王座との棋聖戦5番勝負、豊島将之九段との王位戦7番勝負で、いずれも開幕局を落としたが、両棋戦ではその後、3連勝、4連勝して一気に防衛を果たしている。
「第5局まで2週間ほどあるので、しっかり準備して、状態を整えたいと思います」。天下統一を狙う20歳が好きな武将は織田信長だ。信長は史上最大の下克上といわれる「本能寺の変」で光秀に討たれた。“敵地”で初めて経験する「お城対局」は攻めの「新手」で制した。4連勝での初防衛も見えてきた。【松浦隆司】
○…後手の広瀬はあっさり投了した。今局は角換わり5二金型を採用。「以前かなり研究した形で、前例の少ない形に誘導した」。初日はほぼ互角だったが、2日目になって流れが傾いた。「ちゃんと指せればいい勝負が続くと思っていた。封じ手(66手目)の後手2八歩が思ったよりひどかった。その前の後手8六歩(62手目)が考えどころで、違う指し方をするべきだった」。第3局の負けを引きずったまま、かど番に追い込まれた。「シリーズが続くようになるべく頑張りたいと思います」。

