<ジャパンC>

欧州競馬かと思うような直線の攻防だった。前には壁、隣の馬と接触するほどの激しいたたき合い。ダノンベルーガも、デアリングタクトも、オネストも不利を受けた。そんな過酷なレースを制したのが、ムーア騎手のヴェラアズールだ。

密集の中ではわずかなロスが致命傷になる。少しでも手綱を引けばアウト。瞬時のコース選択も必要。ムーア騎手はヴェルトライゼンデの後ろ、中団馬群の10番手で4角を回った。どこにもオープンスペースはない。1頭ずつ下がってくる馬をさばいていく。

まずは手応えの怪しいテーオーロイヤルをパス。その後、しばらくハーツイストワールを追う形で前との差を詰めると、今度は外へ開いてダノンベルーガの後ろ。勢いのある馬につければ詰まる心配はない。馬のバランスを保ちながら追う手も止めず、最後の進路取りも鮮やかだった。

外からシャフリヤールが内へ切れ込んできたのを見ると、再び内に切り替えてダノンとハーツの間へ。もし、そのまま外へ行っていたら不利に巻き込まれていただろう。この間、横の動きも最小限にとどめ、ヴェラアズールの伸びを邪魔しないように狭いスペースを突いた。

加速してからほとんどブレーキをかけることなく導いたから、4分の3馬身抜け出すことができた。鞍上の指示通り動けた馬の力もあるが、困難とも思える馬群をさばいた名手の腕には感服するほかない。