<ダービー>

タスティエーラを勝利に導いたのは、レーン騎手の隙のない騎乗だった。好スタートから5番手で流れに乗ると、3コーナーでは左後方にいるソールオリエンスの位置を確認。そこから1馬身差を保ちつつ、4コーナーまでライバルを内に閉じ込めた。

日本ダービーを制したレーン騎乗のタスティエーラ(手前から3頭目)(撮影・野上伸悟)
日本ダービーを制したレーン騎乗のタスティエーラ(手前から3頭目)(撮影・野上伸悟)

決め手ではソールオリエンスの方が上。早めに外へ出されては厳しくなる。だから直線に向いてもすぐには抜け出さず、内のシーズンリッチと馬体を並べて壁をつくった。ゴーサインを出したのは残り300メートル付近。ここからなら粘り込める。タスティエーラの手応え、相手との位置関係を計りながら仕掛けた。

4角を回り直線に入ったタスティエーラ(中央)、右後方にソールオリエンス
4角を回り直線に入ったタスティエーラ(中央)、右後方にソールオリエンス

追いだしを待った理由はもう1つある。1頭になると集中力が落ちる特性があり、それを3週連続で追い切りに乗って感じていた。この「対策」と、それを競馬で実践できる「技術」が一流の証しであり、69年ぶりというテン乗りでのダービー制覇を、あっさり成し遂げてしまうすごさだ。

もし、仕掛けのタイミングを誤れば、あの首+鼻+鼻差はどうなっていたか分からない。ライバルの勢いを止めつつ、タスティエーラの力を100パーセント引き出す。まさに“優勝請負人”の仕事だった。

ダービーを制したタスティエーラのレーン騎手はNo.1ポーズする(撮影・柴田隆二)
ダービーを制したタスティエーラのレーン騎手はNo.1ポーズする(撮影・柴田隆二)