イクイノックス世界一の舞台裏は? 東京の木南友輔記者が、世界最強馬がジャパンCで獲得したレーティング133ポンドの根拠、発表までの流れ、今後の展開をJRAハンデキャッパーの宇都宮秀樹氏(53=美浦トレセン上席調査役)に聞いた。
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◆レーティングとは 競走馬の能力を示す客観的な指標で着差、負担重量をもとに国際的に統一された基準により数値化したもの。馬の競走能力を0からおおむね140の数値で示し、単位はポンド(約0.5キロ)を使用している。レースの中で能力を出し切ったと思われる馬(原則として1~4着馬)を探してキーホースとし、距離、負担重量、着差から一定の数式によって算出する。
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算出方法は明快だ。「今回のキーホースは2着のリバティアイランドです」。同馬が5月のオークスで獲得した数字「120ポンド」が各馬のレーティングの基準になった。着差の換算はマイルだと1馬身が2ポンド、2400メートルでは1馬身で1・5ポンドになる。リバティアイランドに4馬身差をつけたイクイノックスの数字は120+4(牝馬のアローワンス)+6(=1・5×4)の130ポンドがベースとなる。ただ、ここからハンデキャッパーの仕事が加わる。「1着馬の勝ちっぷりをどう評価するのか、着差を多めに評価していいのか、という議論を行います」。
着差の換算は基本「6ポンド」だが、最後に流していた勝ちっぷりをどう評価するか。131、132…。「着差分は9ポンド」という結論が133ポンドという数字になった。「これはあくまでJRA発表の暫定値になります。最終的な発表はIFHA(国際競馬統括機関連盟)が1月(下旬)に行います。日本調教馬の史上最高は99年エルコンドルパサーの134ポンドですが、今後、日本を含めた各国のハンデキャッパーによる話し合いで修正があれば、その数字に並ぶ可能性もゼロではありません」。
今回のジャパンCのレーティング作成。JRAのハンデキャッパー同士ではどのようなことが話し合われたのか。「リバティアイランドがキーホースになりましたが、彼女の数字を121ポンドに上げてもいいのではないかという議論、それから4着のドウデュースは121ポンドに上げていいのかという議論がありました」。今年の牝馬の世界最高は英国のエミリーアップジョン、ナシュワの2頭で121ポンド。そして、ドウデュースのプレレーティングは京都記念の120ポンド(昨年のダービーも120)だった。
実はドバイシーマCの129ポンドという数字は「もっと高くていいのではないか」という声が各国のハンデキャッパーから上がっていたとのこと。その後、2~4着馬が大活躍したことは周知の通り。最終発表で上方修正する可能性もある。「間違いなく、今年の世界最高はイクイノックスです」と宇都宮氏。23年の世界最強馬はその数字とともに語り継がれていく。
◆イクイノックスの天皇賞・秋 127ポンドという数字はどうなのか
ジャパンCは素晴らしかったが、127ポンドと133ポンドという数字ほどの差はないのでは…。「レーティングは負担重量と着差で決める数字です。日本の競馬は着差がつきにくいため、レーティングではここまでの数字しか出ませんでした。この時のキーホースは4着のダノンベルーガです」。
◆ダート路線は 「ドバイワールドCを勝ったウシュバテソーロが122ポンド。BCクラシックを勝ったホワイトアバリオが1ポンド上でした。以前はかなり低い数字に抑えられていたこともありましたが、世界に出て数字を獲得し、ダート馬の数字も底上げされています。(ダート世界一の馬が日本から出る可能性は?)あると思います」。120ポンドを超えるレーティングを持つウシュバテソーロ、デルマソトガケ、レモンポップは来年も現役。ハイレベルな戦いが続けば、砂の世界最強馬が日本から誕生も。
◆世界のトップ100G1レース 年間レースレーティング(4着馬までの当該年度のレーティングの最高値の平均、牝馬は+4ポンド)で決めるもので、1位は15年が凱旋門賞(創設年のため13~15年の平均)、16年がBCクラシック、17、18、19年が凱旋門賞、20年が英インターナショナルS、21年が凱旋門賞、22年がBCクラシック。日本のG1の史上最高位は20年ジャパンCの3位。今年はドバイシーマC(1着イクイノックス、2着ウエストオーバー、3着ザグレイ、4着モスターダフ)が初めて世界一になる可能性が高い。
◆宇都宮秀樹(うつのみや・ひでき)93年(平5)にJRA入会。11年からハンデキャッパーを務める。もともと競馬ファンで、好きな馬はメジロライアン。

