誰よりも「ダービーの勝ち方を知る男」の見解は…。

先週に武豊騎手(55)を取材した際に、青葉賞組の話題になった。84年の創設から40年。いまだに本番のダービーを制した馬はいない。35度目の騎乗となる今年は、その青葉賞を勝ったシュガークンとともに出走する。

「勝っちゃいけないレースを勝っちゃったみたい」とジョークを飛ばしたレジェンドへ、僕は聞いた。

「今年は『青葉賞組』というジンクスに挑むことになりますよね?」

僕としては内心で前向きな答えを予想した質問だったのだが、その反応はちょっと意外なものだった。

「ジンクスかというと違う。普通に考えると皐月賞に出られたら出るけど、出てないわけだから。(青葉賞とは)レベルが違う」

そう、ニュアンスの違いを指摘された。「ジンクス」の意味は「縁起の悪い物事」。だが「青葉賞組が勝てない」というのは縁起ではなく、明確な根拠があるということだろう。安直に「ジンクス」という単語を使った自分を反省した。

やはり王道たる皐月賞を戦ってきた馬たちの優位は認めざるをえない。ただ、歴代断トツのダービー6勝を誇る名手は決してあきらめているわけではない。

「体形も乗った感じも(半兄のキタサンブラックとは)違うけど、素質はすごくありそう。相手がものすごく強い中で、楽しみはある」

そして今週、栗東で運良く2人で話す機会があった。話題は世界各国の年長ダービー制覇記録だ。86年にケンタッキーダービーをファーディナンドで制したW・シューメーカー騎手は54歳8カ月。英ダービーでは1829年に勝ったJ・フォース騎手が60歳以上だったそうだ。

日本が誇る55歳の第一人者は、去り際にぽつりと言った。

「記録更新したいね」

今年だけでなく、還暦Vでさえ夢ではないのでは…。ワクワクさせられる口ぶりだった。ジンクス…ではなく“常識”に立ち向かう挑戦から目が離せない。【太田尚樹】