横山典弘騎手(58)が8日の中山競馬で、史上2人目のJRA通算3000勝を達成した。9R湾岸Sのマイユニバースで5番手から直線で抜け出し、1番人気に応えた。1986年(昭61)のデビューから足かけ41年で、武豊騎手に次ぐ大台に乗せた。
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超一流は覚悟が違う。昨年のある日。美浦トレセンの一室で、記者は横山典騎手と膝を合わせた。前週の重賞で騎乗馬に◎を打った。現地で取材していない関西馬で、追い切りやレースの映像を頼りに紙面で見解を書いた。「お前な、無責任なことを書くんじゃないよ。俺に取材してないだろ。俺たちは馬主さんから依頼がなくなったら、飯が食えなくなる。お前は予想を外したら頭を丸めるくらいの覚悟で仕事やってんのか?」。鬼気迫る表情。言葉は怒気に満ちていた。
正直に書けば、びびった。誰もが知る大ベテラン。取材するチャンスがあっても、勝手に壁を作ってしまった。「騎手はな、癖馬を乗りこなせないとプロじゃないんだよ。お前は乗りやすい馬にしか乗れない騎手と同じ。俺はゴールドシップみたいな癖馬かもしれないけど、それをしゃべらせるのがプロの仕事だろ」。今も覚悟の足りない自分を戒めて、一生忘れない30分の一部を書き残す。【桑原幹久】

