宮本慎也氏(51=日刊スポーツ評論家)がプロ野球記録となる5打席連続本塁打を放ったヤクルト村上宗隆内野手(22)を称賛した。

ヤクルトOBで、かつてヘッドコーチとしても若き村上を指導。村上のホームランバッターとしての、すごみを解説した。

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プロ野球新記録となる5打数連続本塁打を村上がマークした。長い歴史の中で4打数連続本塁打は20人いても、誰も達成できなかった記録だ。「すごい!」という言葉の後に「おめでとう!」で祝福したい。

前日の試合で3打数連続本塁打を継続し、第1打席と第2打席で連続ホームラン。1本目はカウント2-1から高めに浮いたカーブをホームラン。狭い神宮球場とはいえ、右翼スタンド上段まで飛ばせる打者はなかなかいない。ただ、打者有利のカウントでありホームランにしやすい球だった。村上の力量からすれば「打って当然」というホームランだった。

ど肝を抜いたのが、2本目のホームラン。打ったのはフルカウントから外角やや低めのチェンジアップ。引っかけてゴロになりやすい球であり、うまく拾えたとしても内野の頭を越すぐらいの当たりしか打てないような球だった。

これがバッター有利のカウントなら、狙い球を絞って逆方向を狙える。ただ、連続本塁打記録がかかっている打席。村上も当然、ホームランを狙っていたと思う。

並のホームランバッターなら「引っ張る=ホームラン」という感覚だろう。もうワンランク上でも「バックスクリーン狙い」だと思う。しかし村上は「逆方向でもホームランにできる」という感覚がある。

だから強引になりすぎて引っ張らなくても大丈夫という感覚があるのだろう。わざわざ狙い球を絞らないでも、コースなりに打ち返しさえすれば本塁打にできる。超一流のホームランバッターの“貫禄の一発”だった。

6打数連続本塁打の記録がかかった打席では、中日バッテリーは徹底的に外角低めの真っすぐで勝負した。結局、フルカウントから6球続けた外角の真っすぐを左翼線へ二塁打。「逆方向でもホームランにできる」という感覚があるから、“残念な二塁打”になったと思う。

技術的な裏付けがある。「打球が上がるスイング」が身についている。外角球を強打しようとすれば、バットのヘッドが返りやすくなるが、2本目の本塁打にしても二塁打にしても、外角の球にヘッドを返さずに打てている。

バットのヘッドを返さず、打球の上がりやすい角度でインパクトすればホームランにできる。そしてたとえ、変化球で多少タイミングをズラされてもスタンドまで運べるパワーもある。「手がつけられない」という領域にいるホームラン打者だと断言できる。

現時点で日本球界にライバルは存在しない。バレンティンの持つ60本塁打の記録更新を狙ってほしい。(日刊スポーツ評論家)