巨人上原浩治投手(43)が、日本人初の金字塔を打ち立てた。広島14回戦(マツダスタジアム)の7回、8-8の場面で登板。1回を無失点に抑え日米通算100ホールドをクリアし、通算100勝、100セーブ、100ホールドの「トリプル100」を達成した。

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 野球にかける「執念」を数値化したら、上原ほど高い選手はいないだろう。「現役でいる間は野球中心。野球を1番に考えて生活している」と言うように、自主トレ期間も週5日の練習日時を逆算してスケジュールを組み立てる。当たり前のようだが、これを完璧に実践できている選手は意外に少ない。「たかが1日休んでも影響しないって思うでしょ? でも違う。その1日が、もう1日だけなら大丈夫って増えていく」と何げなく話す姿にも、迫力があった。

 弊害はある。上原クラスのベテラン選手なら、各業界の交友関係は多い。しかし友達は少ない。最初に立てた週5の練習ペースは崩さないし、急なゴルフの誘いがあってもキャンセル。練習や体を休めることを優先させる。こちらが「断ったらまずいだろ」と思うような人からの誘いでも関係なし。付き合いが悪く、交友関係は広がらない。

 「執念」の源になっているのが「反骨心」。反骨心を辞書で見ると「世間的な権力や習わしに対して抗う気骨」とある。まさに上原の性格そのまま。自分が納得していないポスティング制度など、いまだに文句を言っている。自分の思ったことと違えば、どんな立場の人間だろうと平気でかみついていく。

 若い時によく「投手は左が有利。なんで俺は右なんや」と文句を言っていた。いつも文句を言うときは、それを覆す、見返すといった行動を取るが、さすがに今回の文句ばかりは言っても始まらない。プロ入り後、左投手に転向なんてできるわけがない。

 正月返上の自主トレで長男の一真くん(小学生)を連れてきた。野球用具を持ってきたが、グラブは左用でポジションは投手。なかなかの球を投げていた。左腕有利だと言っていた男の執念が実って、息子はサウスポーになったと内心、驚いていた。すると横から上原が「右でも投げられるんやで」と得意げな顔。言葉の意味を理解した。右でも投げられるんじゃなくて、もともと右利きだったのを左投げに…。恐るべき親心。不屈の執念はこんなところにも宿っていた。【小島信行】