阪神中田賢一投手(39)が29日に引退会見を行った。私はその場にいなかったが、会見の様子を聞いて、すてきな人柄を再確認した。会見の最後に、報道陣に向けて自ら話し始めたという。
「なかなか書きづらい、つかみづらいピッチャーだったと思う。本当に難しい記事になったと思います。そこも含めていいふうに書いていただいて、17年間ありがとうございました。これからも何かしらの形で野球に携わっていきたいと思っておりますので、どこでお会いするか分からないですけど、お世話になると思いますので、これからもよろしくお願いします。ありがとうございました」
誰に対しても裏表なく、飾らない性格。そんな人柄の一端を感じたことがある。
地元の北九州に、中田が幼い頃から通う、うどん店があるという。ソフトバンク時代、釣り好きの摂津や森に近くに店がないかと聞かれ、そのうどん店を紹介した。しばらくして中田が訪れると、店内の壁に摂津と森のサインがある。今まで幾度と通ってきたが、自身がサインを求められたことはない。「近所のお兄ちゃんだと思われてたんでしょうね。奥さん(フリーアナウンサーの角野友紀)が九州の朝の番組に出ていたので、一緒に行った時に初めて気づいてくれて、そこでサインをしました」。1つの笑い話として、穏やかに話す姿がとても印象に残っている。
自分を大きく見せるわけでもなく、おごることもない。プロ野球界で多くの人に慕われた右腕は、きっと第2の人生もたくさんの人に囲まれながら歩んでいくのだろう。【阪神担当=磯綾乃】