阪神豊田寛外野手(26)は、青色のユニホームで躍動する先輩からおおいなる刺激を得ていた。
昨オフに阪神を戦力外となり、今季から中日でプレーする山本泰寛内野手(30)のことだ。13、14日の古巣阪神戦(バンテリンドーム)で計7打数4安打2打点。強烈な“恩返し”を決めた元チームメートの姿に「ちょっと複雑ですけど、でも、すごいです」と素直な心境を口にした。
昨年は鳴尾浜で長く時間をともにした。2人とも、1度も1軍に上がることができなかった。名古屋遠征では焼き肉、新潟遠征ではラーメンをごちそうになった。同じ関東出身ということもあり「ヤスさん(山本)はよく気にかけてくださった」。今でも感謝は尽きない。
昨年、チームは日本一。分厚い戦力に、なかなか1軍のチャンスがなかった。それでも、腐るどころか懸命にバットを振り続ける山本の姿が、豊田の目には焼き付いている。
「本当にあのままの良い先輩。バッティングのことを聞いても、よく答えてくださったので」
虎で一緒に活躍できれば…。そんな思いもゼロではないが、新天地での活躍に納得もできる。
豊田もプロ3年目。1軍出場はルーキーイヤーで矢野監督政権の22年のみ。5試合で計9打席立ち、無安打のまま、そこから1軍舞台は遠ざかっている。
不退転の覚悟で臨む日々だ。ここまでウエスタン・リーグでは19試合で59打数18安打、打率3割5厘。直近のゲームでは4番を任されることも増えてきた。広角に打ち分ける社会人時代の打棒を取り戻しつつある。
「プロに入ってからも、そんなにいい感覚の時はなかったけど、今は逆方向に打てているし、すごく良い状態だと思う」
これで勝負するんだ-。自身の原点であり売りを、あらためて思い出した。「逆方向への打撃が自分の持ち味だった。まだまだ、ここから」。チャンスが決して多くないことは分かっている。中日でワンチャンスをものにしている山本に続いてみせる。【阪神担当 中野椋】