佐藤輝明は必ずタイトルを取らなければならない。そう強調するのは広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)だ。
広島に来たので久しぶりにゆっくり話す機会をつくった。そこで強調していたのは佐藤輝がタイトルを獲得する「必要性」についてだ。
緒方自身、強烈に記憶に残るのはカープ時代の恩師・山本一義から言われたことである。「絶対に盗塁王を取れ!」。プロ9年目の95年、山本から厳命され、必死でそこを目指した。
生前の山本からもその話は聞いたことがある。「タイトルを取ったらすべてが変わるんじゃ、言うてな。まだレギュラーとは言えんかったけど尻をたたいたもんよ」。その結果、同年に47盗塁で盗塁王のタイトルを獲得すると3年連続でそれをキープするのだ。
「現役でやっているときはタイトルについて、そこまで思わないもの。『今年はやれたな』とか、そのぐらいですよ。でも知らないうちにそれが自信になってる。そして現役が終わって振り返れば、やっぱり残るものがあるっていうのは大きいんですよ」
25年のつき合いになるが自分の経歴などについて、あまりどうこう言わない緒方がそんな話をするのはめずらしいな、と思った。それだけ佐藤輝に注目している証しかもしれない。
緒方はルーキー時代から佐藤輝に注目している。「すごい打者。ポテンシャルは計り知れないものを持っている。だからこそ、打率を上げていけば必ず本塁打は増える。そこを本人ができるかどうかですね」。常々、そう話していた。
今季、佐藤輝がキャンプから打率を意識しているのはよく知られることだ。それも影響して、本塁打数が伸びているのかもしれない。あらためて緒方の言ってきたことは間違っていなかったと感じる。
「そりゃあ、1年1年、考えて成長していきますよ。自分で分かることなんだから」。今季、打率も打点も、そして本塁打も順調に伸ばしている佐藤輝について緒方はそう笑った。
思えばマツダスタジアムの開幕戦で放った1号先制2ランから始まった今季である。この日、10連勝に貢献する22号ソロを放った本塁打王レースはぶっち切り状態。同僚・森下翔太と争っている打点王の可能性も十分だ。さらに大きく成長し、強い阪神の象徴となるためにも、今季、佐藤輝にタイトルは必要だ。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




