これが逆襲の1歩目や。阪神の4番マウロ・ゴメス内野手(30)が、先制打に決勝打と3打点の活躍だ。来日2年目で自身最長の5試合連続打点もマーク。チームのDeNA戦連敗を3で止める白星は、5カードぶりとなる初戦勝利。4位タイにも浮上。先発4本柱を投入する今週4試合を借金返済ウイークにするで~。
わずか数秒も待つことはできなかった。ゴメスは二塁ベース上で駆け足をして、一塁走者西岡の本塁生還を待った。同点の9回2死一、二塁。カウント0-2の逆境で、DeNA山崎康の145キロ直球を打ち砕いた。打球が前進守備を敷いていた中堅荒波の頭上を越す。勝ち越し2点二塁打にはチームメートの思い、自らのプライドが結集されていた。背負う物がいつになく大きかった。
「もちろんああいう形で向こうの『ゴメス』が打ったのは素晴らしい。ただ、自分は自分のやるべきことを考えていたよ」
実は最高の結末の前に、序章が用意されていた。およそ6時間前。ゴメスは球場に足を踏み入れると、謎のアルファベットに首をかしげた。「GOMEZ」。そのユニホームを着て練習しているのはDeNA後藤だった。なぜ、日本人が自分の名前をつけているのか。歩み寄ると由来を聞いた。DeNA後藤は以前、チームメートから「ごめーんっす」と謝られ、それが呼び名として浸透。今年からユニホームを新調していた。「いいニックネームだ」。そうやって感心していると、目の前で8回に代打同点弾を打たれた。「GOMEZ」としてのプライドが、モチベーションに加わった。
ゴメスの生活にはいつも使命感がある。4月上旬にはポツリとつぶやいた。「夜は野球。昼は子どもの世話で忙しいんだよ…。高校野球なんて見る時間がないんだ」。相棒マートンお気に入りの高校野球は四六時中テレビ中継される。それでも仕事を離れれば愛する妻と1歳の娘のパパ。大好きな野球は封印だ。敦賀気比のセンバツ優勝を知ると「(巨人)ウツミの母校が優勝したの? なるほど!」と目を丸めたほどだった。前日20日の休日は夕方まで家族との時間を過ごした。リフレッシュを経て戻した使命が「チームの勝利」だった。
初回には昨季14打数1安打、打率7分1厘と苦しめられた久保から左前適時打をマーク。始めから終わりまで主役だった。5試合に伸ばした連続打点で積み上げた数字は「15」。リーグトップのDeNA筒香にあと1まで迫った。
「(5試合連続は)知らなかったけれど本当にハッピーだよ。常にランナーをかえすのが仕事なので、これからもそういう仕事をしていきたいと思います」
目の前に全力な男らしく、個人的な成績には興味を示さなかった。チームは5カードぶりの初戦勝利。4位タイにも浮上。逆襲は始まったばかりだ。心はまた、4番としての使命に向けられていた。【松本航】
▼ゴメスが1回に先制打、9回に勝ち越し打を放ち、今季初の1試合3打点を挙げて、リーグ2位の今季15打点。昨季の同時期は25打点だったためペースは落ちているが、今季の殊勲安打7本は両リーグ最多(先制3、同点2、勝ち越し2)。また5試合連続打点は自身最長。プロ野球最長は、86年バース(阪神)の13試合。



