信州の夜空に、雨水にぬれた白球が浮かび上がる。阪神柴田講平外野手(28)が力ずくで押し込んだ飛球が右中間を破った。何度となく響く雷鳴に負けない大歓声が、黄色く染まった球場左側半分からあふれ出した。1点リードを逆転され、2点ビハインドとなった直後の5回2死一、三塁。広島黒田の高め136キロツーシームを振り抜いた。試合を振り出しに戻す2点二塁打。熱戦をさらに過熱させた。

 「高めのボールを逃さずに打ち返すことができました。逆転された直後に取り返すことができて良かったです」

 荒れ模様の一戦となった。7番今成の先制ソロで先制した2回表が終了した直後、雨が一気に強まった。34分間の試合中断を経た後も、雨は降り続いた。時折、外野奥の夜空に稲妻が走り、ごう音が鳴り響く中でゲームは展開された。4回裏に3点を奪われ、相手は黒田。この日を迎えるまでチームは黒田に2戦2敗を喫していた。劣勢を強いられる状況も予想されたが、伏兵のひと振りが再び流れを引き寄せた。

 得意の「大物食い」だ。6月6日に1軍昇格した後、各チームのエース級に相性がいい。同6日の日本ハム戦では怪物大谷から3打数2安打。同13日オリックス戦では球界屈指の投手、金子から3打数1安打。そしてこの日、黒田からは1回の中前打を含む2安打を決めた。

 あれはもう3年前、12年4月のことだ。伸び悩む柴田に対し、和田監督が投げかけた言葉を忘れはしない。「もっと泥臭さを出せ。ホームベースに当たっての内野安打でもいいじゃないか。オマエは打率3割を打たないといけない選手なんだ」。当時、無意識のうちに安打の形にこだわりが生まれていた。指揮官の言葉が初心を取り戻させてくれた。泥臭く相手にぶつかるだけ-。強い信念があるから、相手が格上だろうと物おじすることはない。

 6チームが団子状態の混セ。今後、チームの底力が試されることは間違いない。柴田に今成といった伏兵がいかに働けるかが、V奪回のカギを握るテーマの1つとなる。