村山さん、見てくれていますか! 阪神和田豊監督(52)が恩師にささげる白星を引き寄せた。自身が現役時の88年、レギュラーをつかんだときの監督が村山実氏だった。98年8月22日にこの世を去った。あれから17年。同じ指揮官となって初めて命日に勝てた。
将としてタイプはまるで違う。和田らを「少年隊」と名づけて売り出し、活躍すれば人目をはばからず涙を流した。そんな激情家とは異なり、闘志をグッと内に秘める。この日も、首位を守っても顔色を変えずに淡々と話した。ただ、勝つための執念は負けない。的確なアドバイスを施したのは試合前練習中だ。3戦12打席連続無安打だった4番のフリー打撃の合間に近づいて身ぶり手ぶりで話す。
「もっと楽に打て! 体の開きが早くなっている」
主砲は打てなくなると、外角低めスライダーを追いかけすぎて体が突っ込む。悪癖を見抜くからこそ、悩める男に魔法をかけた。和田監督は言う。「結果を出したい気持ちでステイバックが浅くなって、タメがなかった。どうしても外のスライダーに止まらなかったからね。そこが止まるかどうかで結果がかなり変わってくるタイプ」。これで、ゴメスの肩の荷が下りた。
1回に四球を選ぶと、5回には追い込まれてから低めスライダーに2球、バットが止まり、詰まりながらも中前へ。7回も外角低めに逃げる球を狙い打って左前打。マルチ安打に「いい助言をもらった。気分がいいね」と笑う。18日からの巨人3連戦はチャンスでことごとく凡退。トラウマを振り払う快打連発だった。
指揮官は「一番の収穫」とうなずき、言葉を継ぐ。「(巨人に)3タテを食らって逆にチームが一層結束したというか、もう1回やるぞという気持ちが選手から出ている」と強調する。村山さんへの恩返しはまだ終わらない。秋に栄冠をつかんだとき、天国から褒めてくれる。【酒井俊作】
▼ゴメスの5回の中前打は、18日巨人戦(東京ドーム)7回左前打以来、15打席ぶり。マルチ安打は、14日ヤクルト戦(神宮)2安打以来、7試合ぶり。



