タフガイが崖っぷちを救った。巨人の抑え沢村拓一投手(27)が、2日連続の2イニング登板で接戦にケリをつけた。2点リードの8回無死一、三塁で登場。阪神マートンが併殺を放つ間の1点に食い止めた。重たい29セーブ目でチームの自力V消滅を阻止。首位阪神と再び2ゲーム差とした。

 帽子をきつくかぶり直した。1点を守る9回。沢村が2夜続けて、2イニング目のマウンドに駆けた。守るべきは単なる1点じゃなかった。自力V消滅を食い止める。「フォームはバラバラで、ボールもいっていなかった。でも、ここまできたら、どんなに見苦しくてもいい。ゼロに抑えてチームが勝てば、それでいい」。肝が据わっていた。

 2死一、三塁で鳥谷。剣が峰の初球。外角150キロに、断固たる決意がぎっしり詰まっていた。選球眼のいい相手が思わずアプローチしたくなるコースと球道。鈍い衝突音で軍配は沢村に上がった。「送り出してくれる監督の期待に応えたいだけ」。早めの継投で沢村と心中を決め込んでいた原監督は、大きな大きな尻をたたき、ねぎらった。

 たくましいクローザーになった。鳥谷を打席に迎える直前、ベンチから吉川が外野に走った。守備位置を再確認する伝令だった。原監督は沢村の球威を信じていた。サヨナラの一塁走者を傍らに、外野の前に落ちる安打を防ぐべく、ベーシックな陣形を指示した。「何も(迷うことは)ない。あそこは沢村。1点を守る。よく守った」。チームの総意として、最後のとりでを剛腕に預けた。

 あの男と重なる。07年、抑えに転向した巨人のエース上原浩治。沢村は尊敬している。海を渡ったクローザーと同じ登場曲「サンドストーム」を拝借し、試合前に聞きテンションを高める。2日続けて2イニングをこなすスタミナ。2イニング放った翌日の練習で、ノーステップの100メートル遠投をこなす鉄砲肩。ずぶとい心臓。「抑えても打たれても切り替えて。どんな形でもチームが勝てばいい」。上原が抑えに定着したあの年、夏場以降に繰り返していたコメントとも重なった。原監督と交わした約束は「鬼になる」。今の沢村なら逆転4連覇の命運を託せる。【宮下敬至】