執念の同点打、代打関本に誰か続いてほしかった。阪神は逆転された直後の7回。1死満塁の好機で代打の関本賢太郎(37)が右前に、いや、一塁の後方にしぶとくはじき返し、同点に追いついた。右背筋痛から9月に復帰し、3安打目で初打点をマーク。なおも続く1死満塁で伊藤隼、坂の代打攻勢が連続三振に倒れただけに、ベテランの仕事ぶりが際立った。
執念だった。代打起用された関本は祈りながら、一塁へ全速力で駆けだした。ふわり浮いた打球が、徐々に落下点を定めていく。1点ビハインドの7回1死満塁。DeNA守備陣は決死の前進守備だった。一塁手ロペスが後退し、追うのを諦める。後ろに空いた広いフェアゾーンへ、願い通りに白球が弾んだ。
「気持ちで打ちました!」
転々とする打球を、二塁手内村が必死に追っている。それを横目に、関本は一塁ベース上でにやりと喜びを表した。「見栄えは良くなかったですけれど、あの場面では関係ないと思います。結果的にランナーをかえすバッティングができて良かったです」。同点の適時打には意地が詰まっていた。背筋痛から復活し、8日に1軍再昇格。すると、入れ替わるように狩野が右手の骨折で2軍に降格した。2枚のはずだった代打の切り札は1枚になった。再昇格後から4打数3安打の結果が、関本の存在価値を示している。
今のチームにおいて、関本は年下選手の「教科書役」だ。代打として今季ブレークした狩野ら、準備の仕方を参考にする選手は多い。関本自身も独自の路線を歩む。打席では短く持つバットを、試合前のフリー打撃では目いっぱい持ち、1球1球の感触を確かめる。「いろいろ考えながら俺もやっているんだよ…」。多くを語ることはしないが、1打席の結果のために神経をとがらせる。打点がつけば、安打の見た目など関係ない。結果が全てと考えるからこそ、試合後の表情は険しいものになった。
「形より結果? それしかない」
猛虎一筋19年目。現在のメンバーでタテジマ歴は最長だ。勝てば天国、負ければ地獄。10年ぶりのリーグ制覇を人一倍願うからこそ、黒星が許せない。拙攻の中で輝いた勝負師はまた、次への準備を始める。【松本航】



