巨人は7日、柿沢貴裕外野手(23)が同僚選手の野球用具を盗み、中古ブランド品買い取り専門店に売却する不正を行ったとして、同日付で契約解除したと発表した。

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 首位広島と戦っている東京ドームを離れて、この原稿を書いている。熱が渦巻くグラウンドの傍らで、至極当たり前のことを指摘することがむなしく感じるからだ。巨人担当キャップの業務として書くが、道理を説かなければならない記事よりも、本来は野球そのものにスペースを割きたい。

 球団創立者で「プロ野球の父」と呼ばれた故正力松太郎氏の遺訓とされる「巨人軍は常に紳士たれ」に従い、伝統的に規律に厳しいとされる。だが近年、不祥事があまりに多く続く。球団の教育を問う声もあるだろうが、選手個人の本質に関わる問題も多い。

 柿沢は2つのモラルに背いた。人間として、人の物を盗むこと。そして野球人として、同僚が苦楽を共にし、技術発揮のための相棒である野球用具を盗んだこと。1軍で活躍する選手でジャイアンツ球場に置かれた用具の多くは、使われなくなったものもあるかもしれない。だが無断で拝借できるものでも、売りさばけるものでもない。説明の必要もない。自明の理だ。

 個人的に「紳士たれ」と大上段から言いたくはない。我々が計り知れない重圧を受け、時には羽目を外したくなることも理解できる。だが物事には節度がある。野球人として輝くために行動する。別に紳士でなくてもいい。ただ、当たり前のモラルを貫いてほしい。【巨人担当・広重竜太郎】